第23話



俺は目を覚ますとまたしても授業が終わっていた


「何回寝るんですか」

「俺が知りたい」


筋肉痛もある程度治ったな

時計の針は一時を指している


座学は終わったばかりか

昨日は食べれなかったが、今日は昼飯を食えそうだ


「午後の授業は、剣術なので第二体育館に集まって下さい」


その声を聞きながら、俺はシズカから貰った弁当を開く


すると、白飯の上にシラスが乗っかっているカオスご飯があった


俺は、一度弁当を閉じて、水筒を開く


その中にはプロテインが入っていた


「シズカは俺を太マッチョにでもしたいの?」

「いえ?私は細マッチョの方が好きですかね。場合によりますが」


どうすんだよこれ  


「マサー。一緒に食うぞ」

「あ、ああ」


俺は思い切って弁当をかき込み、プロテインをがぶ飲みした


「はぁはぁ」

「どうしたマサ。・・・引くぞ?」

「大丈夫だ」

「お、おう。そうか」


若干引き気味のケンタロウをいなして、シノブとご飯を食べていたシズカに話しかける


「シズカ、ノート見して」

「どうぞ」


俺はノートをパラパラと捲る


「いいな。お前は。授業中寝ててもノート見れて。シノブなんか、爆睡してて俺のノート見せる羽目になったぞ」

「すっ、すみません!」


シノブが立ち上がりペコペコとケンタロウに頭を下げる


「シノブさん。大丈夫です。私はただ善意で若に見しているだけなので。そもそも、この学園内では身分を強制的に撤廃されます。気にしなくてもいいと思いますよ?」

「シズカ殿・・・」 


シズカは、笑顔のつもりが右の口角だけ上げて言うのに対して、シノブはうるうると感動しましたオーラが漂っている


前から思ってたけど、君たち結構仲良いよね

あんまり接点はなかったと思うけど


俺は弁当と水筒を鞄の中に入れて、鞄の中から体育着を取り出す


「先、行ってるぞ?」

「あい、わかった。ハーレムをありがとうマサ」


ケンタロウがそう言った瞬間、シズカの目の色が変わる


「お供します」

「全部食ってからにしろ。俺に合わせる必要ないぞ?」

「いえ、もう満たされたので」

「そ、そうか」


俺は、シズカと更衣室に向かう


「先ほども言った通り私はいないのですが大丈夫ですか?」

「大丈夫だろ。多分」


シズカのいない生活なんて15年振りになるんだよな

6歳の時にはもう従者としてついてくれてたし、身の回りのこと全部やってくれたからなぁ


大きく頷くことはできない


俺らは各自更衣室の中へと入り、着替える


俺の方が早く着替え終わるので、更衣室の外でシズカを待つ


すると、


「おう。マサト君じゃん」


脳内戦闘音が鳴り響く

男子高校生(陽キャ)ABCが現れた


戦う

呪文

道具

逃げる←


シズカがまだ出てきていないので逃げられない


「マサト君ってさ、シズカさんのご主人様なの?」


陽キャの話しかける攻撃

マサトは行動不能になった


戦う

呪文←

道具

逃げる


「は?」

「いやー、あんな可愛い子を従者だなんて羨ましいなぁー」


陽キャの煽り?の攻撃

マサトの攻撃力が一段階アップ

マサトは混乱した


戦う

呪文←

道具

逃げる


まぁ、冗談は置いておいて

なんなんだこいつ


確かにシズカは最高の従者だ

こいつらは何が言いたい?


「だから?」

「だからさ、ちょっとぐらい分けてもいいと思わない?」


殺す←

殺す

殺す

殺す


俺はその男を殴り飛ばしていた


「立場的な死と物理的な死。お前はどちらを選ぶ?」

「なっ。俺は貴族だぞ!?公爵だぞ!?こんなことしていいと思ってんのか?!」

「こっちは御三家だ。貴族ではないが、立場的にはお前より上だ」


俺は残る二人も物理的にも権力的にも蹴り飛ばす


「貴族ごっこしてんじゃねぇよ。どこの公爵だ。名前を言ってみろ」

「ぐっ、覚えとけっ!!」


そう言って逃げようとする貴族Aの足を蹴り飛ばす


「ぐふっ」

「覚えとくのはお前だ。今度近寄ってきたらお前の家を徹底的に潰すからな」

「ひっ。すみませんーーーー」


そう言ってABCは逃げていく


ふざけた奴らだな

マジで何がしたかったんだろう


「ひっ。すみませんーーーー」


女子更衣室の中から女子が逃げるように出てくる


その後に、シズカが出てくる


「何したんだ?」

「若も何したんですか?悲鳴が中まで聞こえましたよ?」

「別に何も?」

「じゃあ、こっちも何もありませんでした」


俺は、ジト目で見てくるシズカにジト目を返してやった


「まぁいいや。ああ言う輩が多少いることだってわかってたし」


御三家というのはかなりのイレギュラーである


御三家とは、貴族ではない平民が成り上がったもの達だ


国、いや世界の経済を左右するほどの経済とコネを持っているため、事実上、国王より立場が上になってしまった


当然、御三家同士では取り決めなどはしっかりしている


しかし、貴族達の方はそうでもない


所詮は平民

その上、御三家は歴史が短く100年くらい前に設立?というか成り上がったため、実感が湧かないのだろう


権力を持っていても貴族社会からは独立している

その上、国王の支配下でもないため潰すこともできないし、喧嘩など売ってしまった場合には戦争になる


そしてその場合、御三家は必ず勝ってしまう


当然だ

この国に籍は置いているものの、他の国にもうちらの息がかかったものが大勢いる


つまり、御三家を敵に回すことは全世界を敵に回すのと同意義である


そのうえ、この国はその御三家がいるため絶対と言っていいほど他国からの攻め込みは来ないため大きな声では批判できないが


貴族には差別意識を持つ者が多い

なんで平民がと不満が溜まる

悪循環


大方、親が愚痴ってるのを聞いて下と見なしたんだろうな


そして、少しでも賢い者は従者に不満をぶつける


といっても、従者は御三家の分家がなるのが大半だから御三家に喧嘩を売っているといっても過言じゃないんだよなぁ


「愚か者達ですね」

「それ、逃げてった奴らになんかやったっていってるようなもんだろ」

「私も若の先程の発言をそうと捉えることもできますがね」


俺はチラリとシズカを見て、笑う


「じゃあ、お互い何もなかったな」

「はい」


俺達は、体育館の扉を開けると中に竹刀が二十本くらい入っている筒を見つけた


「若。私は若の力量をまだ把握しきれておりません。手合わせ願います」

「すまん。剣は得意じゃないんだ」


目で追えても手が動かない

焦ったくてしょうがない


フライには、才能がないと断言された時はマジでキレたけど、本当に向いていない


あぁ、あいつのムカつくあの顔思い出しちまった


あの野郎。自分の師匠の家にエ○本持ち込んで保護者枠として怒られたこと絶対に忘れないからな


それも何度も


他人に仲間の性癖教えられる俺の立場にもなってみろ

あの気まずい雰囲気なんてあったもんじゃない


徐々に変わってんじゃねぇよ


一回、カリナを代わりに行かせたら俺まで吊るされかけたからな


「まぁとりあえず、俺にはびっくりするほど剣の才能がない」

「そう、ですか。急に才能に開花したとかはないんですか?」

「そんなことあるわけないだろ。積み重ねが大事だって言ってたしなぁー」


そうだよ。才能があるなら最初から分かるものなんだ

この僕みたいにね


うるせぇ。出てくるな脳内フライ


まぁ、それは冗談として


「若は急に銃の才能に目覚めたと?」

「・・・・はい」


シズカはスナイプ銃の天才だ

流石と言うべきか都合が悪いと言うべきか


才能の有無は一目瞭然なのだろう


どうやって誤魔化すかねぇ


そんなことを考えていると大きな破壊音が体育館に響き渡る


シズカは咄嗟に体操着の中に隠し持っていた銃を取り出し、銃口を音がした場所に向ける


「優秀だなぁ。流石はここの生徒さん」


五人組が体育館の中へと入ってくる


狐面をつけた

大人の色っぽい女性

小さい女の子

ヨボヨボの老人

大男

デブ


「おいおい。まだ入学してから2日しか経ってないんだが、こんなに事が起きるなんてどう言う事だよ」


それに前回はこんな事なかった

何も起きずに平和に過ごせたはずだ


少なくとも俺が学校に在籍してた時期はな

これも魔術の仕業か


「マサト!シズカ!伏せろ」


校長の声を聞いて咄嗟に伏せる


すると、銃撃戦に持ち込まれた


五人組の中の一人のヨボヨボのじいさんがポイっと爆弾を投げる


「シズカ!!」

「はい!」


シズカはその爆弾を蹴り飛ばすと、五人組が入ってきた場所が崩れ落ちる


「ちっ。面倒なのもいるわね」


大人の色っぽい女が舌打ちをしてシズカを見る


「まぁ、待て。そいつはターゲットじゃないぞ。艶狐」

「豪狐・・・。でも、老狐の奴が失敗しなきゃもっと楽に」


内輪揉めか?

この内に


俺は一番弱そうな小さい奴に竹刀を投げつけ、校長のいる方向へと駆け込む


シズカも同じことを考えていたのか、2本の竹刀が五人組の方向へと舞う


しかし、パンッという音と共に片方は燃え尽き、もう片方は凍りついた


「なっ」


しかし、俺とシズカは止まらずに校長のいる場所へと滑り込む


すると、校長は体育館のドアを閉める


「これで、確保。と言いたいところだけど」


校長は、ドアが赤く光るのを見て一筋の汗を流す


「そう上手く行かないね」


俺達は廊下を駆けて逃げる

ドアが爆発した衝撃で体が浮く


皮膚に熱い空気が叩きつけられて、体が舞う

久しぶりの感覚だ


俺は体勢を取り直す


「シズカ!貸せっ」

「はい!」


シズカは崩れた大勢のまま拳銃を投げてくる

俺は受けるとると同時に銃口を五人組に向けて、脳を加速させる


すると、迫ってくる弾に気づき撃ち落とす

その弾は空中で凍りつき、そのまま地面に落ちる


「魔弾か」


俺はその校長の言葉に疑問を持つが、無視して豪狐と呼ばれた大男に弾を撃つと


またしても一番小さい奴がフライパン?のような物体で大男を庇う


「あの小さい奴、主戦力かよ」


俺がそう嘆くと、艶狐と呼ばれた女が笑う


「違うわよ。この子は最弱。見た目通りオマケってやつよ。」


その言葉に校長は絶望感を醸し出す表情をしていたが

俺はシズカと目を合わせる


すると、シズカも同じことを考えているのか頷く


どう見てもあの大男は俺の攻撃に反応できていなかった


嘘だと思われる


「てか、それにかける」


だが、それがわかったところであいつが邪魔だ


撤退しか、方法はない

こういう奴らは大勢で囲って打つのが一番


なんだが


ただでさえ、緊急事態だ

生徒の避難も済んでないだろう


それに増援が来るのがいつかもわからない上に校舎の警備の隙を掻い潜ってここまできた奴らだ

こいつらは増援が来る前に確実に逃げる


目的はここに近い何か

ターゲットともさっき言っていたな


暗殺か?


あの小さい奴がカバーを外せばなんとか


「校長。シズカ連れてなんとかしてきてください」

「無茶だ」

「反対です」


息を揃えたように、二人が反対してくる

君ら相性悪くなかった?


「正直にいう。俺は使えない」

「ああ」


ぶっ飛ばすぞ?

俺は怒りを沈めて、冷静なフリをする


「シズカがあれば大抵な事ができる。そして、校長。あんたはここにいるってことは奴らの目的を知ってるわけだろ?そして、殿が必要となると・・・適材適所だ。」


俺は再び弾を2発撃ち落とす

1発は燃え尽き、もう1発は凍りつく


掠っても駄目。近くにいても駄目


止められても5分ってところか?

いや、シズカが肉体強化してくれたから10分は持つか?


「ほら、行け。危なくなったら、逃げるから。御三家のゴキブリ並みの生命力見してやるよ」

「・・・わかった」

「私は意地でも残ります。肉壁にくらいにはなれます」


俺はシズカが強情だったことを思い出し、苦笑する


「校長、頼むわ」


俺は、五人組に駆け出す


「待ってください。若が死んだら私は一生怨みますよ。御三家同士の問題にもなります」


後ろからそんなシズカの声が聞こえて微笑んでしまう

無理矢理連れてかれたんだろうな


俺は再度集中して、加速世界に脳をシフトする

どれが魔弾とやらかはわからないので1発1発撃ち落としていく


「馬鹿な化け物か。主は」

「こっちも魔道具フルで使うわよ」


俺は豪狐の出してきた銃口がやたら大きい銃

老狐は刀

艶狐は鞭

デブは杖を取り出した


「これ全部当たったらヤバそうだな」

「当たるだけじゃないわよ」


艶狐が鞭を下に叩きつけると同時にピンク色の煙が発生して、辺りを覆う


「ラッキー」


俺は小声でそう呟き、廊下の隅を駆けて五人組の背後を取った


そして、小さい奴以外の足首を撃ち抜けた


「くっ。福狐。回復しなさい」

「わ、か、っ、て、る」


デブが自分の足首を治そうとしゃがむ


俺はさせまいとその手首を撃ち抜こうとするが、小さい奴に阻まれる


「本当に面倒臭いな。お前」

「あなたよりマシ」


俺は小さい奴に蹴りを入れるが細い腕で阻まれる

小さい奴は、俺に銃口を向けていたので即座に叩いて射線をズラす


俺は体勢を直すと同時にデブの腕を撃ち抜こうとすると今度は小さい奴に銃を手首にぶつけられて車線をずらされる


そうして、体術をぶつけ合っていると他の四人が立ち上がった


「なんで魅了が効かない」

「色気が足りないんじゃね?」


まぁ、あんな怪しい煙

吸わなかっただけだが


「よそ見」


細い足が顔面に叩き込まれそうになると同時に俺はその足首を掴む


「お前は油断」


そのまま、俺はその細い足を持ち上げると

小さい奴はブランと逆さまになって体勢を崩す


「油断した」

「何やってるのよ。使えないわね。老狐」

「わかっとる」


小さい奴をお構いなしに斬撃を飛ばしてきた

俺は即座に避けるが、小さい奴を離してしまう


「どうだ儂の魔道具の性能は。斬撃を飛ばすんじゃ」


・・・それだけ?

フライは当然のようにやっていた気がする


まぁ、あいつはあいつで規格外だししょうがないか


「あぁ、もう。時間じゃない。撤退するわよ」

「「「「了解」」」」


そう言って五人組は逃げていった


深追いは・・・する必要ないな

目的は、殿だしな


まぁ、ただで逃すわけにもいかないから


俺はそう言って、拳銃を乱射する


「当たってるとラッキー程度。いや、回復するか」


結構やれるもん・・・だ・・・・・・な


俺はそこで崩れ落ちた

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