七人の小人

みずまち

七人の小人

 こんにちは。

ぼくは七人の小人の中の、一人の小人です。

ぼくたち小人はある森の中で暮らしています。そこに最近、客人が来ました。

名前を白雪姫というそうです。真っ白な女の子でした。

 みんなは白雪姫のことが大好きです。どうやら白雪姫は悪い王妃にお家を追い出されたみたいなんです。

みんなで白雪姫を守らなければいけません。それは、つい二日前くらいにみんなと約束したことです。

 でもぼくはもう一つ約束事をしています。もちろん、あとの六人には内緒にしています。

それは白雪姫をこの家から追い出す約束です。じつは、その約束は悪い王妃としていたのです。

ぼくは王妃のスパイなんです。

 以前、森の中で白雪姫がこの家に来る前に、王妃の使いの兵隊に会ってきんを三枚もらっています。

「もし白雪姫と名乗る女が現れたら家には入れないで。すぐに、報告なさい」

 そう言われました。

はじめは何のことかさっぱりわかりませんでした。

でも、ぼくたちのお家に白雪姫と名乗る女の子が来てすぐにわかりました。

悪い王妃は自分よりもきれいなものが大嫌いで有名な人でしたので、こんなにきれいな女の子がいたら嫉妬で狂ってしまうでしょう。

だから兵隊を森に出して白雪姫を捕まえようとしているんだ、とわかりました。

 ぼくは、白雪姫に会ったら兵隊に報告しようと思っていました。でも白雪姫はぼくたちが外出している時に勝手にお家に入って、勝手にご飯まで食べていました。その上ぼくのお布団の上で眠っていました。

 なんて食いしんぼうなお姫様なんだろう!

 ぼくは腹が立ちました。ぼくがお家にいたら絶対に追い払ったでしょうに。

それから何日か経って誰か一人、ぼくたち六人に小声で言ってきました。

 「白雪姫はあの王妃に目をつけられているようだから来客には気をつけよう。」

 ぼくは金を三枚ももらったことがバレやしないかとひやひやしましたが、みんなの話は白雪姫を守ることでいっぱいでした。

みんなみんな、白雪姫が大好きなんです。

 でも、ああ。ああ、ぼくはだめなんです。

どうしてもあの子を、白雪姫を好きになれません。

パンのちぎり方、スープの飲み方、笑い方、洗濯物のたたみ方、小鳥を惑わすあの歌声、どれをとってもきれいだなんて思いません。

一度、ぼくは悪い王妃を見たことがあります。

 その時は確か、森を出て市場へ買い出しに行った時だったでしょうか。

黒いコートで顔を隠してはいましたが、あれは間違いなく悪い王妃でした。

悪い王妃は市場でりんごを三つ四つ買っておりました。

その時の林檎の受け取り方、銀貨を半分差し出す仕草、笑い方、など、どれをとってもとても美しかった。

ぼくは悪い王妃のほうが、白雪姫よりもずっとずうっときれいだと思っています。

 ですから今、こうして悪い王妃。いえ、あなた様にお手紙を書いているのです。

悪い王妃さま、白雪姫に会いに行くのでしたら明後日にきてください。

その日でしたらぼくたちはおりませんので。そして早く、あの下品なお姫さまを追い出してください。

成功をお祈りしています。

さようなら。



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七人の小人 みずまち @mizumachi

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