第十一回 一歩を踏み出してごらん。


 ――それは果てしなく遠い場所にあるわけではなく、もっと身近にあったの。


 この学芸会の稽古の中に。そして、すぐそばに……

 この子もまた同じだった。誰かに殴られたのか? 頬を腫らした男の子が。


「……出雲いずも、あの時はごめんな」


 接する機会は、七人の小人の場面で。……他に二人。咄嗟に蘇る場面の、あの時の三人に囲まれた。とはいっても、ここは教室の中。たとえ隅っこでも周りには人がいる。


 それでも、怖くないはずがない。


 私に乱暴した男子生徒が三人だから。脳内では漠然として、あの時の場面が蘇る。引くの、ドン引き……下半身の感覚がスーッと抜ける程、脚が震えているの、両脚とも。


 ――でも、


「許さない。やっぱり許せないの、どうしてあんなことしたの?」


 と、恐怖を打ち消すように、その精一杯の言葉……やっと出た、精一杯の言葉だった。


「だってよ、お前の作品……

 少なからずも人気あるじゃないか。俺たちにとってはこの団栗の背比べは譲れなかったのに。それなのにお前ときたら、いつも高飛車でさ、俺たちのことなんか眼中になさそうでさ。もっともっと作品のことで語り合いたかったのに、お前だけ驀進して……」


 三人が三人とも、今にも泣きそうな顔。


 それにしても驚いたのは、私ってそんな風に見えていた? って感じなの。それに書くと読むに登録して、私の作品のことを知っていたってことなの。私は知らなかった。


 そして、スーッと深く息を吐いて、


「だったら、もっとフェアーに切磋琢磨したら?

 私だったらね、……いつでもOKだよ。君たちと語り合うの。ただし作品のことから」


「出雲……」


「あーもう! 煮え切らないなあ! 女の私がここまで言ってるんだから、男の君たちはもっとシャキッとしなよ。反省タイムはこれでおしまい。ここからスタートだから」



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