第十回 勇気の舞台! 登校した日。


 ――学園の門を潜る前、躊躇いがなかったといえば嘘になる。


 でもその嘘も、嘘でなくなる時、私の笑顔は仮面ではないことが証明できるの。



 それは勇気の舞台……


 今日の登校がそうなの。向かう教室こそが、その舞台となる。早坂はやさか先生と歩む校長室から教室への道程。何故に校長室からの出発なのか……それは私が、あの日、病院に運ばれた過程が物語られている。実は、具体的に起きたことは、私自身の記憶からは……消えたのだろうか? 思い出せないのだけれど、その関係で暫くの間は、喋ることが……できなくなっていた。――でも大丈夫! 或いはその記憶が潜ったままでも、負けないから。


 譲れないこと。それは妥協しないことに類似る諦めないこと。


 だからこそ私は強くなる。一人では弱かった私も、大切なあの子たちがいるから、強くなれるの。――夢を、叶える勇気が沸々と湧いてくるの。だから、この場に立つの。



 時迫る学芸会の激しき練習の最中に於ける……


 ここ注目を浴びる教室の中に。震える脚もすぐ居直る。私を見るなり梨花りかは、号泣の域に達した。それは私の願いを、本気で受け止めてくれた証。彼女の心を察するのにさほど時間はかからず瞬時、「ありがと……」と、労をねぎらう、溢れくる感謝の思いへ。


 そして千佳ちか……


 彼女は私が認めた白雪姫。だから、まだ泣くには早いよ……との思いで、


「千佳、学芸会は優勝だよ。私の心はそうだから、千佳もそう心を決めて」


「うん、やる。やってやるよ、天気てんきちゃん」


 この上ない理解者。私の心に同化してくれる。この子が一番初めに親友の域に達した女の子。そして一番初めにできた私のお友達……。お友達に求めることは、私が持ち合わしていないことを持っていること。私が嫉妬するほどの、白雪姫のような存在だった。


 白雪姫はきっと、私に大いなる影響を与えていることは間違いなしなの。



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