第六回 会った時、事件は起こった。


 ――その場所は、私自身がもう見当つかない状況。薬のことも忘れる程に。



 私には持病があった。……もうそれは、現れていた。懸命に抑えるけれど、息が切れてくる。ヒューヒューと気管から、嫌な感覚がしていた。――もう少し待って。


 と、祈るような思い。どうしても、会わなければならないの。アカウントを取り返すためにも。修復する方法を知っている。教えてやると……書くと読むの復活と、私の『新解釈の白雪姫』を再開させるためにも。身を犠牲にしてでも。その覚悟はある。


 だから歩く。歩き続ける坂道を……


 炎天下。まさにその時刻。無慈悲にも、私の体力を奪ってゆく。朦朧とし始めた時、会うことが叶った。――驚くべき顔ぶれだ。男子生徒が三人、三人とも同じクラス。一緒に学芸会を盛り上げようと、志を共にした、その顔ぶれ達だ。


「……どうして? どうして、あんなことしたの?」


 と、言いながらも……発作は、少しずつ起きていたの。彼らは言う……「自分の胸に訊いてみな」と口を揃えて。私は思う。――わからない。私が何をしたの? そう思って次の瞬間、眼鏡が宙を舞った。火花も散って目の前、頬に痛みを感じた。思い切り殴られ高と思ったら、お腹にも。蹴られて……「おいおい、まだ始まったばかりだぞ」


 ――俺たちの制裁はな。


 意味の解らないまま、叩かれる頬。左右激しく。そして……「ちょ、やめ……」と、声にならない声。激しい音と共に、制服は破られる。押し倒され、地面に顔を押し付けられながら、今までに経験したことのない痛みが走った。……女の子にしかわからない痛み。


「お前の……ばら撒かれたくなかったらな、中止することだな。『新解釈の白雪姫』の執筆は中止とな。書くと読むの作家か何か知らんが、偉そうに、いい気になるんじゃねえ」


 ――でも、譲れないの。


「やめない。私はやめないの。……執筆するの、やめないんだから……」


 発作が起きても、言い続けた。命を懸けてでも、喩え命を懸けてでも。



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