第20話 朝チュンとオピュロイ毒沼




__チュンチュン。


俺は外の鳥の鳴き声で目を覚ます。これが俗に言う朝チュンと言うやつか。


昨日の夜、何もなく1人で就寝しただけなのにギマンはそんな勘違いな感想を述べる。


背伸びをすると、腕の関節がポキポキとなった。


眠気を払い、昨日カイルから貸してもらったパジャマから普段着に着替えリビングに行くと、タンクトップとショートパンツ姿のリーシャちゃんがキッチンで朝ご飯を作っていた。


タンクトップがリーシャちゃんの実った果実によって押し出され、本来腰まで丈があるはずなのにお臍が見えていた。


何という破壊力だ。一緒に寝てたら錯覚でキノコと寝ている。とかしないと無理だったな。


「あっ!ギマン!おはようございます!」


俺の気配に気づいたらしく、朝なのに元気な声で挨拶をするリーシャちゃんに俺も「おはよう」と言い返しソファで寝ているカイルにチョップを喰らわす。


「グヘェッ!」と奇声を発し起きたカイルは何が起きたのか周りを見渡し、俺と目が合う。


「もう少し優しく起こしてくれよ。後頭部刺されたのかと思ったぞ」


大袈裟だな。俺なりの優しい起こし方なのに...


あとはカオリか。さすがに俺が部屋に行って起こすのはマズイなと思っていると洗面所から声が聞こえる。


「今度からギマンより早く起きないといけないと感じたぞ私は」


ポニーテールにしていた髪を今は解いていたカオリが俺を不審な目で見ながら現れた。


「俺が女性の後頭部にチョップをして起こす人間に見えるのか?」


「ギマンならやりかねないからな」


ったく、どんな評価なんだよ。しっかりしてくれ好感度。


「丁度、朝ご飯出来たので食べましょう!」


俺達が言い合いしてると、リーシャちゃんが美味しそうな匂いを漂わせたシチューをテーブルに並べた。


俺達はその匂いに釣られ、カイルを端に追いやりソファに座り、シチューを口の中へと入れる。


「美味しいな。リーシャちゃん料理出来るんだね」


野菜と肉は丁度よく煮込まれており、スープを飲むと優しい味だかしっかりとコクと旨みがあった。


「はい!両親が亡くなってからは私がずっと料理していたので得意です!」


リーシャちゃんの嫁ポイント加点っと。


カオリもこのシチューの美味さに舌鼓していると、俺達の会話を聞いた途端、慌てながら


「わ、私も料理出来るぞ! もちろんだとも!」


聞いてもいないのにそんな事を言い出すカオリに俺は疑いの目を向けて「じゃあ今度何か作ってくれよ」と言うと、カオリはバツが悪そうな表情で了承した。


1番最初にカイルに毒味させよう。


俺は何も知らずにシチューを食べているカイルを見て憐れんだ。



「さて、タリスマンとの決戦は今日の23時だが昨日のみたいに魔の森でレベル上げはしない」


Lvが200を超えてから上がり具合が芳しく、今までの魔物を狩っていても今日の決戦までに間に合う気がしないと感じたからだ。


「それで昨日カオリから聞いたオピュロイ毒沼に向かおうと思っている」


魔の森での帰り道、カオリに魔の森以外で強力な魔物が確認されている場所はどこかと聞いたら、少し間をあけてオピュロイ毒沼と答えた。


カオリの話によるとオピュロイ毒沼は地面が全て靴の上からでも犯される毒沼になっており、土属性で地面を固めながら風属性で空気を浄化しながらで無いとそもそも進むことすら困難な場所だ。

そして、出てくる魔物は全て毒を持っており討伐しようにも返り血や吐く息にも強力な毒が含まれており数々の冒険者が命を落とした。


何故そんな場所に冒険者が行くのか。それは、毒沼の奥に咲き、何でも治しと呼ばれる「珠廻花しゅかいばな」という花を得る為だ。


珠廻花しゅかいばな」は強力な毒沼の中でも咲いている事から状態異常を何でも治すと言われており、依頼が耐えないのだ。その為、依頼額は非常に高価で一攫千金を狙う者達が挑戦したが未だかつて「珠廻花しゅかいばな」を摘んで来た者はいないと言う。


そんなオピュロイ毒沼だが生息している魔物は危険度Sランクの蛇毒王や死を運ぶ蠍デススコーピオン毒に潜む百足グールセンチピートなとが有名だが、最近オピュロイ毒沼から逃げ出してきた冒険者が危険度SSSの九頭竜ヒュドラが現れたと言った。


当然、ギルド側はその冒険者の言うことを信じなかったがその男が突然全身を掻きむしり奇声を発しながら死ぬと緊急クエストを設けた。


一応ここまでが俺が昨日聞いた話だ。


何故そんな危険を犯してまでオピュロイ毒沼に向かうかと言うと、1つはタリスマンとの決戦までに珠廻花しゅかいばなを確保しておきたいからだ。


相手が吸血鬼である為、保険を持っておきたいというのが本音だ。


あとはみんな力が付いてきたからチマチマ経験値を稼ぐより命の危機を感じながらの実戦経験をしておきたいからだ。


魔の森ではほとんど俺が倒し、絶対に倒せると踏んだ相手としか1人で倒させなかった為か圧倒的強者との戦闘を俺含めてしていない。だから今回の九頭竜ヒュドラ討伐は丁度いい機会だと思った。


「みんな今回は俺が絶対に倒してくれるという保証はない。その覚悟で付いてきてくれ」


「おう!」「わかりました!」「もちろんだ」と良い返事が返って来た。


「よし、じゃあみんな準備してオピュロイ毒沼へと向かうぞ」


その言葉を皮切りにみんな準備へと取り掛かった。







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俺のスキル《錯覚》が強すぎるんだが 牛富 @sei224

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