第2話 ニャルコ

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 ニャルコは#人さらいバスとして一部で話題になっているアシタカ村の出身者が職場にいることを知っていた。昔から、怖い話や、廃墟、呪い、人の怨念にまつわるようなことがどうしようもなく好きで気になっていた。

 同じ県内の、同じ区域の隣の隣の村の怪談が話題になっているのだ。アシタカ山は、峠を越えた町の、その奥の村から見える山のはずだ。用事がなければ行くことはない。今日は、午後の休憩時間に絶対タイスケくんに話しかけることに決めていた。外の喫煙所に行く前につかまえよう。

「え?村の怪談?特にそんなのなかったけど。」

まったく心当たりのないようにタイスケは言う。昔からの言い伝えにはないのか。ニャルコはがっかりした。だいたい、なにか伝説のもとになるような事件があって、それから派生して、戒めのような怪談が生まれるはずなのに。それにしても、タイスケくん、ちょっとカッコいいな。きゃは!

「そもそも親どころか、今も村に祖父母がいるってわけでもないし、俺もこっちに家買ってからほとんど行ってないな。」

ですよねー!子持ちですもんねー!さぞかわいい妻と子供なんでしょうねー!

はいはい!みんな解散~!

「3年前の片づけで、ちょっと行ったきりだよ。」

3年前?ニャルコは思い出した。大雨の災害があった。一面土砂で茶色くなった現場のニュース映像を見た記憶がある。

そのまま、ちょっとぎこちない空気で、タイスケに礼を言って見送った。


 それにしても、アシタカ山の、消える人さらいバスは、どうもあやしい。古くない。バックボーンが薄い。最近のネタ投稿なのかな。出どころも、あやふやだし、普通は、地元の人が知っているはず。せっかく面白そうだったのに、ハズレだったかな。こわ~い事件や恨み、怨霊が関わってると思ったのに。

#アシタカ山

#消えるバス

#人さらいバス

「アシ●カ山の人さらいバスに関わった人、消されてるっぽい」


ニャルコはツチノコ大王のつぶやきを見つけて、これがそうかとわかるような武者震いを知った。



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