第42話

☆☆☆


目が覚めた時、あたしは真っ白な世界にいた。



体中が痛くて言う事をきかない。



病院だろうか?



点滴が見えた。



あたし助かったの?



そう思いホッと息を吐き出した。


他のみんなはどうしたんだろう。



死んだ?



少し体を動かそうとしたけれど、拘束されているようで動く事ができない。



それところか、声も出ない。



無理に口を開けようとすると、鋭い痛みが走った。



なんで?



どうなってるの?



頭の中が混乱しはじめた時、視界に誰かの姿が見えた。



それは見覚えがあって……。



「仕方ないよね? みんなが興味のあることを動画配信しなきゃ、両親と冬夜を助けられないんだもん」



千恵美が、そう言った。



「驚いたぁ? 火事があってからもう半年だよ。火事のあった日あたしは奇跡的に目が覚めたの。でも両親と冬夜があたしの医療費のために自分たちまで犠牲にしてた」



千恵美がスマホであたしをうつしている。



「みんな命は助かったけれど、まだまだ治療が必要な状態。あたしだって、まだ通院しなきゃいけないの。ねぇスミレ? 誰のせいでこうなったと思う?」



千恵美がニヤリと笑う。



「スミレはいい子だから、協力してくれるよねぇ?」



あたしは必死で左右に首を振った。



「大丈夫だよ。スミレが少し我慢するだけであたしたちの医療費はまかなえるんだから」



千恵美が点滴を見つめてそう言った。



ドクンッと心臓が大きく跳ねた。



あたしは一体何を点滴されているんだろう?



化け物と化した美世を思い出す。



「怖いのは一瞬だけ、すぐに自我を失うからなにも怖くない」



嫌だ!



あんな姿になんてなりたくない!



ブンブンと左右に首をふる。



千恵美の笑い声が響き渡る。



あたしを化け物にしてどうする気!?



あたしが人間として最後に見たのは、千恵美の恐ろしいくらい綺麗な笑顔だった。




END

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

監禁少女 西羽咲 花月 @katsuki03

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ