第27話

男は周囲を気にしながら美世に近づいていく。



「誰これ」



20代前半くらいに見える、イケメンだ。



けれど中学生と付き合うなんて思えない。



「知らない人だね」



音がそう返事をする。



2人はそのまま肩を並べてホテル街を歩き始めた。



「ちょっと、本気?」



吸い込まれるようにして1つのラブホテルに入って行く2人。



あたしは唖然としてその光景を見つめていた。



「美世はいろんな男に手を出してたみたいだけど、まさかサラリーマンまで相手にしてたなんてね」



そう言って、音は笑った。



自分のことを好きな男が相手なら、きっと誰でも良かったんだろう。



そう思うと、自分と冬夜の関係なんてちっぽけな事に感じられてきた。



美世は冬夜と同棲しながらもきっと他の男と遊んでいるに違いない。



だからこそ、冬夜だってあたしと浮気をしているんだ。



画面は切り替わり、今度は通学路になった。



美世と冬夜が一緒に歩いている。



「千恵美のことは諦めた?」



「あぁ……そうだな」



やけに暗い顔をしている冬夜。



なにがあったんだろう?



「この後ろ姿はどう見ても千恵美だもんねぇ」



美世はそう言って自分のスマホを冬夜へ見せた。



冬夜はそれをチラリと見ただけで視線を外してしまった。



画面にはなにが写っているんだろう。



「なにかあったらいつでもあたしに言ってね。あたしは冬夜の味方だから」



美世はそう言うと、冬夜と別れて小道へと入って行く。



薄暗い小道の先にさっき動画に写っていたサラリーマンが立っているのが見えた。



「上手く行った?」



「うん。まんまと騙されてくれたよ」



美世はそう言い、笑い声をあげる。



「よかった。これで美世ちゃんの恋も実りそうだな」



「篤さんのおかげだよ」



「俺は別になにもしてないし」



「今度またホテルに行こうね。うんとサービスしてあげる」



そこで映像は止まった。



あたしと音は目を見交わせた。



「今の、どういう意味だと思う?」



「美世があのサラリーマンと共謀して偽物の写真を撮影したんでしょ。千恵美が援助交際をしているような写真を」



あたしはそう返事をした。



さっき流れた動画と繋ぎ合わせて考えると、そうとしか思えなかった。



「最低」



音はそう呟いた。



「あんたは泥棒のくせに」



そう言うと、音が睨み付けて来た。

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