温かい作品に、「ごちそうさまでした」。

ドロドロと重すぎず、爽やかな男女の恋愛を書かれるのが得意な(※人食い調べ)佐倉島さんの作品です。なんというか、結ばれるべくして結ばれる二人というか、温かい気持ちで見守りたくなる男女が描かれるんですよね。

 化け猫といえば七代祟る、だが六代目の主人公が末代になりそうなので、化け猫のおタマさまが主人公の恋愛を後押しする……とコンセプトが最高の作品。
 ちょっと妖怪などに詳しければ広く知られているだろう化け猫伝説を、このようにコミカルにアレンジするのは座布団一枚!

 そして、「本来なら憎々しい関係のはずの祟るものと祟られるものが、なんだかんだ仲良くなる」過程についても、本作はなあなあでは済ませず、「おタマさまはなぜ化け猫になったのか」を踏まえて解き明かしており、丁寧で隙がありません。私は猫大好きなので泣けてきました。

「化け猫なので普通の猫が食べちゃダメなもの(チョコレートなど)もOK」という細やかな設定もニヤリとします。普通の猫ちゃんに西京焼きは塩分過多だろうし。

 発想の良さと、それに甘えず丁寧に構成されたストーリー、そして見事な大団円。欲を言えば魚屋の彼をもっと掘り下げたり、他の妖怪も登場してにぎやかな一年を過ごすロングバージョンが読みたくなりました。

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