スケール8

8.1 91ページ目 優しさを受け取る痛み

 --91ページ目--


 二月十五日と十六日


 LIFE:


 検査入院という名の現実逃避から一週間。

 私は、家族からの自立と病院への依存を天秤にかけていた。


 私の自由のために時間や労力を使うことを、両親は犠牲だとは思わないのかもしれない。

 けれど、私が家に帰ってきたときに、二人の体調がとても良くなっていて、家が片付いている様子を見て、明らかに私が二人の日常に与えている影響の大きさを実感した。


 私は、お母さんやお父さんだけじゃなく、空やハル、直や拓さん、みんなの優しさを受け取ることに痛みを感じるようになっていた。


 散々悩んで、二人に、すぐにでも病院に入院したいと伝えた。

 二人は、その翌日、十八歳の誕生日までは家にいて欲しいと返事をしてきた。


 私の入院日が私の十八歳の誕生日の翌日、つまり、五月七日に決まった。




 Will and testament:

 お父さん、お母さん、私のわがままを聞いてくれてありがとう。みんなの優しさはとても大きくて、あたたかくて、私一人では受け取りきれないほどでした。その優しさを、私以外のいろんな人にも届けてくれたら嬉しいな。まぁ、私がそんなことを言わなくても、きっと、そうやって、みんなは生きていくんだろうな。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る