第17話

 「一年一組のみんなー!居ますかー!?」

 「「「はーい!」」」

 「それじゃあ!番号順に並んでバスに乗りましょうねー!」

 「「「はーい!」」」

 

 翌日の朝、学校前に集合した我ら新一年生一同は探索者協会横浜支部行きのバスに乗り込んだ。

 葵はクラスが違うので違うバスである。

 

 探索者適性検査。

 小学校入学時、全新小学一年生を対象に、北海道、仙台、新潟、東京、横浜、名古屋、大阪、京都、広島、高松、福岡の十二ブロックに分かれ、探索者への適性を測定するために行われる義務検査である。

 評価方法はいたって簡単、レベルの上がりやすさをFからSで示すのである。


 我はこの世界に来て情報を集めているとき、この検査の存在を聞いて焦った。我の異常なステータスが世間にばれてしまうのではないかと。

 しかし、考えてみればLvという概念があるこの世界において、初期ステータスの低さは問題ではない。

 よって、問題ない。

 運がよかった。

 逆に今後が不安になってくるほどに……。


 警戒しておこう……。

 

 ちなみに、探索者は人気の職業なので、もしも適性が高ければ探索者を志す者が多いらしい。


 「大星―、ポッキリ―食べるか?」

 「あ、ああ」


 バスに乗り込み、指定された席の隣の席に座っていた河井が人気チョコ菓子のポッキリ―を奨めてくる。

 何となく予想はしていたが……。番号順で席隣だし。

 いや、悪い奴ではないんだが、何というか一緒にいると、すごいエネルギーを消費する感じがする。

 まぁ、検査会場の探索者協会横浜支部まで十分ちょっとだからいいか。

 

 「俺、適性あるかなぁ」


 窓の外を見ながらそう呟く河井を見て、昨日の葵を思い出し、思わず口が開いてしまった。


 「なんだ?河井は探索者になりたいのか?」

 「ああ!」

 

 そう河井に聞くと、河井は瞳をキラキラさせて答えた。

 声がデカい。


 「なんで探索者なんだ?」

 「なんでってそりゃ……かっこいいからに決まってるだろ!俺が目指すのは最強の探索者、Sランク探索者だ!」

 「Sランク、それはまた……」


 Sランク探索者。

 世界に百人も、日本国内には両手の指で数えられる位しかいない探索者の頂点、だという。

 そこを目指そうというのか。

 興味が湧き、我は河井のステータスを覗く。



 _____________________________


 名前 河井龍二


 職業 なし


 称号 絶対魔王ぶっ殺す世界の住人


 加護 なし


 基礎能力値

 HP 22/22?

 MP 9/9?

 物攻 4?

 物防 6?

 魔攻 8?

 魔防 7?

 敏捷 9?

 幸運 100


 スキル

 地球人Lv1000(対魔王攻撃力1000倍、魔王攻撃無効、魔王防御無視、対魔王超デバフ、対魔王再生超鈍化etc)、???


 _______________________________

 

 「中学は絶対に探索者学校に行くんだ!あ!そうだ!大星も一緒になろうぜ!探索者!」

 「は?」

 「は?、ってなんだよ……お前も無理だって言うのか……?」

 「いや、そんなつもりは無いが……」

 

 なんだこの?の嵐は。

 前世も含めて初めて見たぞこんなステータス。

 もしかするともしかするかもな……。

 

 「あ!見えてきたぞ!探索者協会!」

 「あぁ、そうだな」


 見えてきたのは地上三十階建て位の黒いモノリスのような建物。

 ビル群の中で異質さが際立つその建物こそ、探索者協会横浜支部だ。

 バスが止まり、先生達の先導によって建物に入る。


 曇りガラスでできた自動ドアを通過すると、そこにはおそらくは案内人だろうと思われる若い女が居た。

 

 「い、一年生のみんな~、本日、皆さんを案内させていただく、二宮涼子です。よ、よろしくね~」


 いかにも猫撫で声と言った感じの声だ。

 慣れていないのだろう。

 たぶんあの人探索者だ。

 ステータスは見ていないがオーラがある。


 案内された検査会場は二階、探索者専用の病院フロアだった。

 一人一人診察を受けるようにして検査を受けるらしい。

 

 「それじゃぁ、一人ずつ一組の子から出席番号順に検査を行います。一番から六番の子、呼ばれた診察室に行ってください」


 お、早速か。

 

 「大星くんー。大星空人君ー」


 六番診察室のドアの奥から、我の名を呼ぶしわがれた声を聞き、六番診察室と書かれた部屋へ入る。

 中に入ると、白衣を着た老人が居た。

 どことなく狸っぽい空気をまとっている。

 まぁ、ちゃんと検査してくれるなら関係ないが。


 「早速、検査を始めるぞい」


 そう言って眼鏡をかける検査官の老人。


 「よろしくお願いします」


 我がそう言うと、検査官の老人が金属の板を取り出す。


 「この板に手を置いてくれ」

 

 指示通りに金属板に手をのせる。

 

 「なに?」


 すると、検査官の老人の表情が固まった。

 あれ?

 何も問題はない筈だが。

 

 「あのぉ、何か問題でも?」


 我が問うと、医者は一瞬ニヤリと笑って。


 「……いや、何でもない。もう検査は終了だ。出てって言いぞい」

 

 我は指示通り診察室を出る。


 良かった。

 もしかしてSとかだったのか?

 我天才だし。

 うん、ありえるな。

 おそらくそれを見て驚いたのだろう。

 ま!クソ女神のせいでレベルは一生上がらないけどな!ははははははは!


 ちっ。

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