第二章

第15話

 『空人―!葵ちゃんもう来てるわよー!』

 「分かってるー!」


 母さんの声を聴き、我は急いで学校へ行く支度を整え、玄関へ向かう。もちろん傘は必須。

 あんな事があった翌日だが、学校には当然行く。

 精神的疲労が半端ないが、ゴブリンロードの一件は両親に知られる訳にはいかない為、行かないという選択肢は無いのである。

 

 「空人遅い」


 玄関にはむすっとした顔をした葵が居た。

 

 「ごめん、じゃ、母さん!行ってきまーす!」

 

 そう言うと、母さんがリビングから顔を出す。


 「行ってらっしゃい。気負付けていくのよー」

 「はーい」


 母さんの声を聴き流し、通学路へ向かう。

 通学路に出て一息つく。

 遅めの時間だからか、周りに人はいない。

 そのことを確認して、葵に話を切り出す。


 「昨日の事、両親に話してないよな?」

 「もちろん、空人は何か秘密にしたげだし、何より言ったら確実に叱られるしね?でも、昨日帰った後、お母さんになんかあったって言われた」

 「それはたぶんレベルアップのせいじゃないか?」


 我はクソ女神の妨害のせいでレベルアップ出来なかったわけだが、当然、葵はゴブリンロードを倒した後、通常通りレベルアップを果たした。

 確かに、改めて葵を見てみると、何というか、レベルアップ以前よりも、何というか、存在感のようなものが増した気がする。


 「そういえば、あの化け物を倒した時、レベルアップがどうとかスキルがどうとか声が聞こえた気がする。……そういえば朝から体が物凄く軽くて、異様に力が湧いてくる。これがレベルアップしたって事なのかな?そう言えば、空人はしなかったの?レベルアップ」

 「あー、うんまぁ、よんどころない事情によってできなかった」

 「いや、意味わかんないんだけど」

 「俺も」

 「は?」


 それにしても、葵のステータスはどれだけ上昇したのだろう?

 見てみるか。

 我は葵に『看破の魔眼』を使用する。


 _______________________________



 名前 天道葵


 Lv3


 職業 なし


 称号 絶対魔王ぶっ殺す世界の住人 天才児


 加護 なし


 基礎能力値

 HP 20/20 → 24/24

 MP 12/12 → 18/18

 物攻 2 → 10

 物防 2 → 8

 魔攻 11 → 19

 魔防 9 → 15

 敏捷 7 → 17

 幸運 100


 スキル

 地球人Lv1000(対魔王攻撃力1000倍、魔王攻撃無効、魔王防御無視、対魔王超デバフ、対魔王再生超鈍化etc) 剣術Lv1 HP自動回復Lv1 ???


 _______________________________



 凄いなこのレベルという物は……。

 この数値が二つ増えただけで既に葵のステータス平均が前の世界の大人レベルにまで達している。

 それに……


 「剣術にHP自動回復、スキルが二つも……。Lv1とはいえ一回の戦闘で……」

 「ねぇ、何してるの?私をじろじろ見たりして」

 

 ……今更葵に隠す必要はないか。

 だが……


 「……絶対に誰にも言わないなら教えてやる」


 そう言うと葵は苦笑した。


 「ホント空人って秘密ばっかだよね……。言わないから聞かせて?」

 「じゃあ言うけど、葵のステータスを見てたんだ」

 「ステータス?何それ」

 「名前、レベル、職業、加護、基礎能力値、スキル、まぁ他にも色々あるけど、端的に言えば自分でも分からない位の超詳細な個人情報だ」

 「え……」

 

 我がステータスについて説明すると、葵はドン引きした。

 何故に?


 「え、って何だよ」

 「何でって……、空人、それ覗きと一緒でしょ?空人の覗き魔」


 ……覗き魔?

 我が?

 そんな事……

 あれ?

 よく考えてみたらそうだ。

 そんな事今まで考えた事も無かったが。


 「確かに」

 「じゃぁ勝手に見るのは辞めたら?ほらあれ、何だっけ、プライバシーの侵害だよ」

 「いや、それは無理だ」

 「いやなんでよ」

 「これが無いと俺は死ぬかもしれない」

 「死!?マジで?」

 「マジで」


 これはホントの話。

 もしも我がステータスを見る事を控えた場合、ただでさえ……あ、来た。


 「葵、離れて」

 

 我がそう言うと、葵はハッとしてすぐに我から離れる。

 空を鳥の群れが通過し、まるで決まっているかのようなタイミングで我に向かって糞を投下する。

 

 ボドドドドドド!


 それを我は鳥の群れを察知した瞬間開いた傘でその糞を防いだ。

 本日分のう〇こ貰いました。

 まぁ、この様にただでさえ運が意味不明なほど悪い我である。

 そんな我が周囲への注意を少しでも怠ったらどうなるだろうか?

 という事で、我が『看破の魔眼』の無断使用を控える事は無い。


 糞の処理までの一連の動作を手早く終える。

 すると、退避していた葵が戻ってくる。


 「まぁ、別に重い事情があるなら構わないけど、私のそのステータス?を見る時ぐらいは一言言ってよね?」


 葵にはばれてるわけだし、それくらいなら問題ないだろう。


 「わかった」

 

 そうこうしている内に学校に着いた。 

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