第9話依存の何が悪い

「ねぇ気持ちいい?ねぇどうなの?カンジてたりするの?」

太腿に頭をのせた私の耳もとで甘く艶めかしい声音で攻める皐月のおかげで耳や顔が熱を帯び始めた。

「あぅっ……うぅぅ、やぁ……やっめ、てぇ……」

イジメられているのに、嫌な気持ちが全身に広がっていかない。

むしろ嬉しいと思ってしまっている。

彼女の自宅で彼女の自室のベッドで膝枕をされている状況でさえなければ、こんな感情に支配されることなんてないのに……

私は、彼女の匂いに満たされた室内くうかんに閉じ込められた現状いまが幸福感で満たされている。

稲躬皐月いなみさつきは、私にとってトクベツな存在ユウジンだ。

稲躬皐月カノジョにばかり負担をかけ、依存し、そればかりか——まで。


弱っちぃ私の弱音を聞き続け、受け止め続け、泣きじゃくる私に手を差し出して、背中に腕を回して抱き締めてくれる。

彼女以上に私を愛してくれる人間あいてなんて誰ひとりおらず、死を望むことなんて『当たり前』だった日常まいにちを変えてくれた。



稲躬皐月カノジョは、初瀬茉理わたしと同じ泣き虫で壊れやすく脆い17歳の少女だというのに——。



私は、皐月にならメチャクチャにされても恨むことはない。


だから、だから……私は現状いまが幸せだ。

彼女となら最期がどんなのだろうが構わない。


私は、稲躬皐月かのじょに依存している現在いまが——。


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