第6話コート上で輝く彼女

夏休みに入る三日前の今日、だだっ広いグラウンドと体育館に別れ、様々な競技を行う。

サッカーやバスケ、バレーといった競技で学年の、クラスの団結力を高めんとするクラスマッチが行われている真っ最中の現在。


その他に球技とは関係していないオセロなどといった遊戯あそびも体育館に設けられた一室で行われている。


私が通う高校は、グラウンドより体育館の規模が大きい。


体育館の2Fに設けられた観客席で、私はバレーの試合に出ているクラスメイトに声援を送りつつ、一学年上の二年三組女子が試合をしているバスケのコートにちらちらと視線を向けていた。


朱色のビブスをつけた美桜菜先輩が敵チームの壁に味方チームのクラスメイトにボールを渡そうにも渡せないでいた。

残り時間2分を切っていて、今決めないと勝てない状況だ。


周りから注目されたくない、冷ややかな目線に晒されたくないのに......絶対勝って良いところ見せるって言ったのに、何してるの。


話が違うじゃん......美桜菜先輩ぃっ!


──もうっ、嫌っヤケクソだぁ~っ!


「美桜菜せぇ~んっっぱあぁいいっっ、頑張れえぇぇ~っっ!敗けるなああぁぁ~っっ!」

今まで出したことのない大声量の声援を美桜菜先輩かのじょに送った私は、喉に片手をやり擦りながら美桜菜先輩かのじょから目が離せずに試合に注目する。

声援を送った直後に、美桜菜先輩の口もとが僅かに動いて、クラスメイトにボールをパスして、壁が壊れたのを確認した先輩が戻ってきたボールをすかさずゴールへと華麗にシュートして決めた。


ふぁ~っ、何とかシュート決めてくれたよぅー先輩ぃぃ~。


周りに座っていたクラスメイトや先輩の数人から視線を浴びせられていた。


おっ、終わったぁ~あぁ......私の平穏な高校生活ぅぅー。


無事に二年三組の女子は出ていたバスケの試合に勝った。


観客席を離れ、出場する競技場所に向かっていると、美桜菜先輩に出くわし、足を止めた私。

「ありがとう、香那ぁ!おかげで勝てたよ!香那も頑張れ、応援してるっ!」

「ありがとう、先輩......期待してますから、いつもの」

「おぅっ!いつものなっ任せなっっ!」


美桜菜先輩かのじょからのご褒美のためなら頑張らないわけがないよっ!


憧れであり、想いを寄せる美桜菜先輩の背中ばかりにすがっていたら遠くに行っちゃう。


それだけは、嫌だ。


今の関係が壊れないように──全力で。



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