1粒目

入学式の日、いきなり僕にガム云々の話をしてきた彼女は遠山晴香といった。休み時間を友達と過ごしたり、可愛いものが好きだったり、至って普通の女の子だ。

たった一つを除いては。彼女はなぜか放課後になると毎回僕にガムを与えてくるのだ。

「なぜ?」と聞いても彼女はいつも微笑むだけで何も答えてくれない。ただ一回だけ、いつもと違う日があった。その日いつものようにガムを差し出す彼女に僕は聞いた。

「1時間ガム噛むって本当?」すると彼女は少し驚いたように目を見張ってから

「うん。だってもったいないじゃん。味しなくなったら味変すればいいんだよ。」と言って去っていった。この時まだ僕は彼女がガムに何を見出しているか知らなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る