第13話 朝食

「んっ……もう朝か……」


 カーテンの隙間から朝日が漏れる。この季節になると布団の魔の手は力を弱め、すんなりと俺を布団から出してくれる。


 ただ冬はえぐい。登校しないといけないのに一向に出してくれないから。


 時計を確認するとまだ6時30分。枕元にあるスマホに手を伸ばして通知などを確認するといつもメインに遊んでいるソシャゲへのログイン。


 今日のログインボーナスは……経験値とかいらねえ! グダグダな時間を数分過ごすと、昨日も見ていた株のサイトをみる。


 昨日の夜見て今の朝も見てどうするねんと思うかも知れないがめっちゃ重要なのだ。日本時間で23時くらいからアメリカの株の取引が始まる。


 そして朝起きたら終わっているのでそれの確認をして日本がどうなるか考える。アメリカに影響されやすいからね。


「おはギャア」という言葉もある。朝起きたらアメリカが急落していた時に使うのだ。


「うんうん。今日は大丈夫そうだな。昨日に引き続き今日もアメリカは強い強い」


 昨日といえば紗耶さんが家に来たんだっけ。それで一緒に寝て……寝て……


「はっ!?」


 横に目を向ける。確か昨日は紗耶さんと一緒に寝たんだよな。俺、なにもしてないよな?


 確認も含めて横を見るが横には誰もいない。あれ? 紗耶さんのことって夢?


 しかし、布団からは甘い匂いがして昨日のことが嘘ではなかったことを裏付ける。確かに紗耶さんはいたんだ。


「とりあえず一階に行こう」


 と、いうことで階段を降りてリビングへ向かう。するととても良い香りがただ寄ってくるではないか。


 まだ少し睡眠欲が顔を覗かせていたが、一気に食欲が勝ってきた。今日の朝食は何かな。わくわく感と共にリビングの扉を開いた。


「おはよう真夏くんっ!」


 そこは天界だった。エプロンを着た天使がテキパキと配膳をしている。手に持つ料理は神が召し上がるような料理に見えた。


「おーい真夏くん? まだ寝ぼけてるのかな〜?」


 天使が俺に呼びかける。そしてこっちにやって来た。


「んー? ちょっと顔でも洗ってきたら? サッパリして気持ちいいと思うよ」


「はい、そうさせていただきます」


 天使の言われるまま顔を洗ってまたリビングに戻ると、そこにはやはり天使……違った。そこにいたのは紗耶さんだった。


「おはよう真夏くん。朝ご飯出来てるよ。座って座って」


 天使こと紗耶さんが席に案内してくれる。まだエプロンを着ていてそれがとてもグッとくる。


「おはよう真夏。今日は紗耶ちゃんが作ってくれたのよ。見て美味しそうな料理。本当にいいお嫁さん貰ったわね」


 母さんの話をスルーして料理に目を向ける。なるほど。これは母さんが絶賛するわけだ。


 ご飯とみそ汁。それに黄金に輝く卵焼きと鮭。模範的な日本の朝食だろう。


 朝、早く起きてこんな料理を作ってくれるなんて惚れてしまう。そんなことを考えながら紗耶さんの見る中、まずは卵焼きに手を伸ばした。






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