第23話 神出鬼没な黒虎

 結局、あの後ストーカー探したけど見つかんなかったな…。幻覚、とかじゃないよな…?というか幻覚だとしたらマジで俺の脳が心配になるのでやめてください。本当に。


 あ、やばい時間が。はよ会社行かねば、電車間に合わなくなる。




 やば、早く来すぎた…。家の時計少し早まってたみたい。5分も早く着いちゃったよ。走ってきた俺が馬鹿みたい。スマホの時間見ればよかったなぁ。


「お前ちと早く来すぎじゃね」


「うん、家の時計少し早まってたみたいで…って、あれ?」


 おい、まさか…。


「うわぁ!またお前か!」


「うわぁとは何だ。ただ話しかけただけで」


「いきなり現れたからびっくりしたんだわ…」


 またこの黒虎は…。いきなり現れては話しかけてきて…。というか何で駅で再会するんだ。普通街中とかでしょ。何故ここなんだ。


「何でお前ここに居るん?」


「お前に引き寄せられたから、かな」


「何だよそれ…」


 零がヘラヘラと笑う。また意味不明なこと言い出したよ…。もっと何かこう、話通じるようなこと言ってくれればいいのにさ…。


 その時、アナウンスが鳴った。電車が来たようだ。


「ほら、電車来たぞ」


 電車がホーム内に入ってきて、体に風圧が少しかかる。徐々にそのスピードは下がり、やがて停車した。ドアが開き、数人の人が降りてくる。


「じゃ、俺行くからな」


「おう、行ってら」


「え、お前は乗らな…」


 俺が零の声に反応して振り向くと、その時既に、零の姿は無くなっていた。…また音も無しに逃げられた…。毎回どこに消えていくんだあいつは。


 ドアが閉まり、電車がゆっくりと動き出す。一瞬、柱の近くに零が立っていたような気がしたけど、多分気の所為だ。




「おはようございまーす!」


「あ、おはよう蒼哉」


 会社に来て早々けいちゃんと遭遇。…うん、やはり今日もけいちゃんはイケメン。一生この姿を見ていたい。…でも誰かに似ている様な…ま、気の所為か。


「あ、そういえばけいちゃん…」


「どしたの」


「最近、俺ストーカーされててさ」


「よし俺がそのストーカー見つけてお仕置してやる」


「いやそうじゃなくてさ、てかバイオレンスはダメよ…」


「…まぁ、とにかくそのストーカー相手が黒虎何だけどさ、けいちゃん知り合いにそんな人居ないかなって」


「うーん…黒虎の人は居ないかなぁ…」


「うーん居ないか…」


 うーん、けいちゃんなら同じ虎獣人だから、親戚とかにワンチャン居ないかなーって思ったんだけどな…。より一層零の謎が深まったなぁ…。


「てかそのストーカー許せないから俺が今日、蒼哉の家まで一緒に行くわ」


「え、マジで?けいちゃん今日予定とか…」


「今日は何も予定なしだから安心して」


「有難うねけいちゃん…ちなみに本音は?」


「蒼哉の家に入りたいだけです」


「素直でよろしい」

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