第5話唐揚げの思い出 前編

「ただいまー」


「唐揚げ先輩お帰りなさーい!」


 尾野美杏が台所から包丁を持ったままダッシュで俺のもとに駆け寄ってきた。


「あー! 危ない危ない!」


「おっとこれは失礼」


 今度は包丁を一旦台所に戻しにダッシュで台所に戻りもう一度俺のところに来た。     

 どうやらいつもどうりの尾野美杏に戻ったようだ。


「からあげ先輩!」


「なんだ……って……え!」


 いつもどうりに戻った尾野美杏は俺にその大きな胸を押し付けながら抱きついてきた。


「ちょちょちょ! お前何してる!」


「何って、からあげ先輩成分の補給です」


「そんなものはない!」


 理性が保てないと感じた俺は無理にでも尾野美杏を引き離そうとするが、


「お前……力強すぎ!」

 

 筋肉のない陰キャ男がテニスをしている今どきjkに勝てるわけもなく、引き剥がすことができず、玄関でうるさくしていたせいか、


「お前、何してんの? jkに引っ付かれてそんなに嬉しんだね。キモ」


「あ……」


「あらら」


 琴美が部屋から出てきて俺に冷たい目を向け、そして罵声をくらわせ、その後また部屋に戻っていった。


「これで俺達の関係を修復できるのか?」


「あ…あはははは……」


 本当に大丈夫なのか? 先が思いやられる。


「私ちょっと琴美ちゃんと話してきます!」


「あ! ちょおまえ!」


「大丈夫ですよ!」


 胸を張ってそう言った尾野美杏だが、本当に大丈夫だと思っていたのかはその手の震えを見てすぐに分かった。

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