第6話 一番地 

きぃ…という少し古びた音ともに扉が開けば、二階建ての少し小さい家の中が見える。家具は敷布団と書物机、ちゃぶ台、箪笥のみ。

「他に欲しい物や、自分好みのものがほしいのなら都市の方に行けばいいわ」

ぱたぱたと中のホコリを追い出すように杏は窓を開ける。人が住んでいたという印象の家だ。ほんのちょっと前までは。

「いつ頃から人がいなくなっていったの?」

「ほんの少し前よ。デパートってものができてからだわ」

あぁ…なるほど。

人と合うものは便利なものを求める。そのため、このように都市へと人は流出していくのだ。

昔も今も何も変わらない。

「ここってさ、他に人とか住んでないの?」

「人?まぁ、ほんの少し程度なら。

 一番地には私と貴方以外はいないわ。

 挨拶がてら、会いに行ってみましょう」

「ちょっと緊張するな…」

「はぁ、村長なんだからもう少しぐらいはしゃきっとしなさんな。人がいるなら二番地と三番地ね、四番地は…まぁ…」













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過去に戻って文明開化のお手伝い 和狐 @kogitunekonkon

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