第1話 こどもポッチ
「はーちゃん、聞いて聞いて?でね、パパと友人Aは、危なーい場所からママのことを連れ出したんだよ?」
「うーん」
「
「はーちゃん、よくわからない!」
「えぇっ」
「はーちゃん、
はーちゃん、こと
鳩子パパは「気をつけるんだよ~。吹雪くんは認めないけど、パパ我慢する~」と、話を聞いてくれない娘に向かって手を振り送りだしたのだった。
◇
吹雪くんの家までの道のりは結構遠かった。
それもそのはず、彼女の友達吹雪くん、こと
しかし、だからこそ≪こどもポッチ≫なるものが世で流行るのだろう。
鳩子はいつもこの≪こどもポッチ≫を胸のポケットに入れていた。理由は単純に可愛いく、
さっそく鳩子はこの≪こどもポッチ≫を取り出し、吹雪くんに連絡しようとした。
ところが――鳩子が操作すると画面の履歴には「かがみくん」の文字が二十件ほどザッと入っており……、鳩子は歩くのをやめ、勢いよく地団太を踏んだのだった。
「もう!どうしていっつも吹雪くんは連絡くれなくて、寝てるうちに
そういう問題だろうか。
鳩子はわけのわからない憤りから、鏡くんと連絡をとろうとした。すっかり吹雪くんのことはそっちのけとなってしまっている。
鳩子が勢いよく≪こどもポッチ≫の決定ボタンを「えい!」と押すと――……。
――ピロリピロリ♪ピロリピロリ♪
≪こどもポッチ≫の着信音が流れはじめた。それと同時に鳩子のものとは異なる≪こどもポッチ≫の着信音もした。不思議に思った鳩子は、そちらの方を向いたのだった。
――ピロリピロリ♪ピロリピロリ♪
やがて鳩子はその持ち主が着信を無視しているように思えてきた。その証拠に、延々とピロリ♪がやまない。鳩子は試しに自分の≪こどもぽっち≫の「かがみくん」を停止してみた。
すると、音がなりやんだ。
「ワザト無視してるの?はーちゃんが≪こどもポッチ≫を無視したから?」
そこはちょうど古い小さな公園の前だった。
ブランコも何もかもところどころハゲているのが、その外からでもうかがえた。
『いいかい?もう、公園は危ないから入っちゃダメなんだよ?わかった?』
鳩子の脳裏には、そんなパパの忠告が一瞬だけよぎった。
しかし、音のした方角は間違いなく公園の中からだった。――鳩子はすこしだけ頭がモヤモヤしたが、結局はよく考えられずに、立ち入り禁止の公園の中へと入ってしまったのだった。
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