衝撃の事実

 気がつくと私はベットの上にいた。

 何故なんだろう、、、私は今、何処にいるんだろう?

 頭ががんがんする。何かを考えようとしても意識がもうろうとしている。


「あれ、目を覚ましたのかい!?」


 ぼやけた視線の中に、うっすらと気持ちの悪い笑みを浮かべた湯河先生の顔が見えた。


「ここは・・・。私は・・・。え、、、身体が、、動かない・・・」


 私は身体を起こそうとするが、自分の意志通りに身体を動かせずにいた。


「これから楽しいことをするからそのままでいてください」


 先生は、今まで見たことがない下品な笑みをしながら、私のブラウスのリボンに手を掛け勢いよく引っ張っると無造作に床に落とした。


「先生!?・・・やめ、、て、、、」


 言葉が出ない。


 そして、今度は一番上のボタンに手を掛ける。私は、力を振り絞って手を動かそうとするが上手く動かない。


「あーーーーーーーーーーーー!!!!!」


 私は、力の限り叫んだ。

 だが、それは全く声になっておらず、何の抑止力にもならなかった。


 ただ、少しずつ頭の霧は晴れてきている。

 ここは、進路相談室横の保健室のベット。しかも、ベットのカーテンは閉められており、外から中を見ることは出来ない。

 そうだ。それに、今日は、部活がない月に一度の日だった。この日はホームルームが終わると生徒はすぐに家に帰らなければならない。勿論。校内に残ることは禁止されている。だとすれば、今、この学校には誰もいないのではないか!?私は絶望を感じていた。


 いつの間にかシャツのボタンは全て外されていた。

 そして、先生はニヤリと笑うと「やはり、綺麗ですね。今までの中で一番ですよ」と下品な顔を見せ、シャツに手を掛けた。


「や、やめて・・・!!!!」


 蚊が鳴くような小さな声しか発することが出来ないが、さっきよりましになっている。


「やめて?やめるわけないでしょう!?ふふふふ」


 全身に鳥肌が出ている。とにかく気持ち悪い。なぜ、こんな男に自分の身体を曝ささらさなければなければならないのか・・・。

 先生は、私の身体を横に傾けるとブラのホックに手を掛ける。


「いやぁーーーーーーーー!!!」


「先生、もう、やめて!!!」

 

 進路相談室と繋がっているドアが勢いよく開き、真結が入って来た。


「なんだ真結か、驚かすなよ。お前は黙ってろ。あー!?いいのか?お前の動画をネット上にばら撒いても?まぁ、あれだけ可愛い声で喘いでいる姿だったら、きっと大人気になると思うけどさ」

「やめて下さい・・・。そんな事言うのは・・・。私は、本当に先生のことが好きだっただけなのに」

「おやおや、、そんな嬉しいことを言ってくれるのですか?ですが、私はもう神田さんの方が興味があるんですよ。だから、貴方は早く出て行って下さい」


 私は真結の手紙の内容を思い出していた。

 家に帰ってから見てと言われたが、どうしても気になり、授業中にこっそりとその手紙を見たのだ。そこには、衝撃的な内容が書かれていた。


「私は、湯河先生と付き合ってた。

 勉強の相談をしているうちに、いつの間にか私は先生に恋をしていたんだと思う。先生に、自分の気持ちを打ち明けると、私のバイト先に来てくれるようになって、バイトが終わった後に食事をしたり、バスケ部の部活の時も新宿の市民体育館近くで待ち合わせして、それから映画を見たこともあった。本当に楽しかった。

 そして、自然と私は先生と結ばれたんだよ。私は初めてだったし、先生の事がもっと好きになっていったのはわかるでしょう?

 ある日、先生から、卒業したら結婚しようと言われた時は、もう本当に幸せだった・・・。


 だけど、だけど、、、実は、先生は沢山の女子生徒と付き合っている最悪な男だったんだ。それを知った私は、先生に別れを告げ、菅谷先生に洗いざらい話をすると言ったら暴力を振るわれて右手を骨折したんだ。そして、いつの間にかホテルで撮られていた動画をネットに流すぞとも脅されて、、。

 もう何も考えないようにして毎日を惰性で過ごしていたの。


 あいつ、、今度は美依由に興味を持っているような気がしてならないの。だから気を付けて。絶対に二人っきりにはならないようにして。本当に今まで黙っていてごめん。本当にごめんなさい」


私と真結は、お互いを見つめている。


「真結、辛かったね。大丈夫だよ。こんな奴に絶対に負けないから」


 少しずつ声が出て来た。

 湯河先生は驚きを隠せないようだ。もっと薬が効いていると思っていたのだろう。


 その瞬間、真結は湯河先生をはじき飛ばした。


「美依由、逃げて!早く!!」


 私は、もつれる足で、壁に手を掛けドアに向かった。だが、湯河先生は私の髪をひっぱり、引き戻そうとする。でも、真結が小さな身体でそれを邪魔する。


「真結、、、。お前、どうなってもいいのか?引っ込んでろ!」


 先生は怒鳴りながら真結を突き放そうとしている。

 真結のおかげで出来た一瞬の隙に、私はドアを開け、もつれる足を引きずりながら廊下からそして、階段を少しずつ登って行く。目指すのは屋上だ。


 ここまでは、想定通りだった。

 湯河が自分に何かしてくるということは真結の手紙を見なければわからなかったが、結果的にこうして屋上に向かうことは、まさに筋書き通りなのだと思う。

 これから向かう屋上で、湯河と揉み合って、落ちてしまうのだろうか?いや、そこまでは流石に分からない。だが、妹尾さんもこの時間を使って、きっと手を打ってくれているに違いない。最大限の信頼が出来る人、その優しい笑顔をこんな逼迫した状況の中でも私は思いだしていた。





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