第二話

 この状況は幻術ではなく、現実だと気づいた。

 

 矢と銃弾が飛んできた。


 それよりもだ。いったい、俺はナニに巻き込まれた?


 仕事を終えて帰社しようとしたとき、空間の歪みを感じた。魑魅魍魎などが出現するときに発せられる邪気でもなく、また、地縛霊などの思念体が引き起こすポルターガイスト現象でもなかった。

 高度に組んだ術式だった。が、鼻が利く俺には関係なかった。

 おごるわけではないが、俺が褒めるほどの術式を扱えるモノたちは限られている、し。その連中は俺が鼻の利くことを重々承知している、と、なると。あとは、姉である"玉梓たまずさ"が、自分の仕事をほっぽって。また、俺にチョッカイをだしてやがると結論づけて、歪んだいる空間に俺は手を突っ込むんで、解除術式の菩提ばだいを放とうとしたとき。

 身体が急に――引っ張れた。

 一瞬、呪詛返しを喰らったと思い込んでいたが――違ったみたいだった。

 

 両手を高くあげながら、青い空を遊覧飛行している雲を眺めながら、思う。

 

 射ったのは――エルフっ娘。

 耳が長くとがっている、エルフの代表的な特徴。衣服は光が差し込む森に溶け込むように、小さなデジタルパターン迷彩の貫通衣を着ており。さらに急所を守るために、深緑色の女性用レザーアーマーを装着していた。

 下半身はタイガーストライプのレザーパンツに、走る――跳ぶ――しゃがむ、機動性重視のジャンルブーツ。

 最近のエルフは、実用性重視なのね。

 矢を放ったエルフっ娘の弓、化合弓コンポジット・ボウだった。俺の右側頭部、数センチ横を飛んでいったのは、複合材料製の矢である。殺傷力抜群、この距離で当たったら簡単に頭蓋骨の串刺し、できあがり。

 

 初対面の女性に気軽に、"カワイイねぇー"は軽薄だった、な。反省。

 と、

 それよりもエルフっ娘も、ヤバイが――貧乳っ娘も、相当ヤバい。

 警告なしで発砲しやがった! 違うな、エルフっ娘も警告なしで弓矢を放ってきてたわぁー。

 

 この頃の娘さんたち、逞しーぃー。


 しかし、エルフっ娘は森林戦を想定した装備をしているが、貧乳っ娘は市街戦を想定した装備一式。

 暗がりに紛れ目立たずに行動でき、権威や恐怖心を相手に印象づける黒を基本色に、少しだけ、灰色の散りばめた迷彩服を上下に着込んでいる。上半身には密着しながらも動きの邪魔せず機能性もありながも、収容量の多い、タクティカルベスト。足元は、着ている迷彩服の基本色である、黒のミリタリーブーツ……ギミック付き。

 左肩には肩掛け紐を取り付けた散弾銃ショットガンを携帯し、左腰に短剣ダガー。反対の右腰は、使い込まれた黒ずんだ革製のバックサイドホルスター……。現在、そのホルスターに、銃は、収められていません。

 だって、俺の左側頭部、数センチ横に銃弾を撃ち込んだからです。


「次、勝手に動いたら。――射貫く、よ」

 美しい腰まで長い漆黒の髪を靡かせた、美少女エルフ娘っ子。

(矢先が俺の額に向いてる、し)

 まじ、だ!


「右に同じ、です」

 金髪ボーイシュな、美少女貧乳っ子。

(銃口が俺の額に向いてる、し)

 本気マジ、だ!

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