旦那に「出ていけ!」と言われたので旦那の愛車に乗って家を出た。

バネ屋

旦那に「出ていけ!」と言われたので旦那の愛車に乗って家を出た。

 結婚して20年。


 大手自動車メーカーに勤める旦那と、高校生の長女と中学生の長男の4人家族。

 築10年になるマイホーム。2台の自家用車。

 他人様から見れば、裕福で幸せな家族に見えるのだろう。



 ウチの実家の両親からも「良い人と結婚出来たな。幸せ者だ」と度々言われてきた。

 学生時代からの友人達にも「羨ましいよ。ユーコは幸せものだね」と言われたものだ。



 確かに、私が思い描いていた幸せな家庭像を今実現出来ている、のかもしれない。

 でも、それは見せかけの物だ。中身なんて伴っていない。



 家計は旦那に管理され、自由に使えるお金なんてない。

 働きに出ることは許されず、家事しかすることが無くて時間は有り余っているのに、お金が無いから趣味も持てず。


 旦那なんて、毎月の様にゴルフに出かけ、しょっちゅう新しいクラブを購入している。

 私なんて、化粧品一つ買うのにも領収書必須だというのに。



 服だって、旦那の趣味に合わなければ着ることが許されず、おしゃれを楽しむことなんて諦めた。


 車だって、旦那は国産高級車をモデルチェンジの度に買い替え、私は10年以上乗っている軽4。








 そんな旦那の口癖

「そんなことも知らないのか」

「そんなことも出来ないのか」

「なにやってんだ、お前」


 会社では確かに優秀な社員なのかもしれない。

 でも、それをそのまま家庭に持ってきて、私や子供たちに対してマウントを取っては自尊心を満足させる旦那。


 娘も息子もそんな旦那にさっさと愛想を尽かし、部屋に閉じこもってコミュニケーションを拒否するようになった。


 私もそうしたいけど、それが許されない。

 自分の部屋なんて無いし、家事することを拒否なんてすればどんなことになるのか想像するだけでも恐ろしい。

 実家に逃げたくとも、両親は旦那の本性を知らずに旦那の味方するだろう。










 2年前までは、こんな生活を当たり前のこととして受け入れていた。

 何も疑問を持たずに、毎日毎日旦那の機嫌だけを気にして生きてきた。




 でも、2年前に娘の反抗期が始まった。


 そこで目が覚めた。


 当時中学2年生だった娘に気付かされた。

 私だったら恐ろしくて言えないような「うざい」「くさい」「むかつく」を旦那に向かって言うようになった。

 本当だったら「お父さんになんてこと言うの!」と子供を叱るべきだろうけど、私は内心で(いいぞ!もっと言ってやれ!)と娘を応援していたんだ。


 何の根拠も無しに、娘に愛されていると思い込んでいた旦那は、娘に拒絶されたのが相当ショックだったのか、反抗する娘に何も言えず、私に「お前の教育が悪いからだ!」と当たり散らした。


 目が覚める前の私なら、旦那に向かって必死に謝ったりしていたのだろうが、娘の反抗する姿を見て目が覚めた私は(ざまぁみろ)と内心で笑い、黙って旦那のお説教を聞いてるフリをした。


















 ある日の夜、自室でパソコンに向かっていた旦那が大騒ぎしだした。


「回線が繋がらない! お前何かしただろ!」と私に激高しだした。


 私はパソコンを買うようなお金は無いし、旦那のパソコンも触ったことすら無い。


 ネット回線のことだって、パソコンを持ってない私ではチンプンカンプンなので、全て旦那が手配して契約している。







 何かが頭のてっぺんで弾けた。


 身に着けていたエプロンを脱いで床に叩きつけた。



「パソコン持たせてもらえない私が何をしたって言うんですか!?」

「あなたの部屋に何年も入ったことの無い私が何したって言うんですか!?」

「ネット回線の知識なんて無い私が何したって言うんですか!?」

「あなたは気に入らないことの全てを私のせいにしたいだけじゃないんですか!?」

「あなたは何も悪くないっていうんですか!?」

「もううんざり!」


 ここまで言ったら旦那に「なんだその口の聞き方は! 誰に食わせて貰ってると思ってんだ! 出てけ!」と言ってビンタされた。



 ビンタされても私は一切怯まずに、旦那のことを睨み返した。

 まるで「出て行くならお前の方だ!」と言わんばかりに。



 旦那は私の初めての反抗にビビってしまったのか、自室に閉じこもり出てこなくなった。




 私は「これはチャンスだ!」と思い、着替えを旅行バックに詰め込み、家計用に渡されているお金と自分用の印鑑、保険証等を確保し、家を出る準備をした。


 最後に、娘と息子の通帳を持って子供たちの部屋に行き「お母さん、家出ることにしたからごめん。あなた達の通帳渡しておくから、それで1か月何とか頑張って」と言い残し、旦那の高級車に乗って家を出た。ケータイ電話は置いてきた。




















 翌日。


 まず最初に車のトランクにあるゴルフセットをリサイクルショップに持ち込んだ。

 全部で、80万になった。その足で個人医院に行き、旦那にビンタされたことを伝えて診断して貰い、診断書を発行してもらった。


 次に、銀行に行って通帳を作った。

 更に、その日の内に不動産屋に行き、ウィークリーマンションに入る契約をし、新しくケータイ電話を契約して、職探しを始めた。


 運よくスーパーのレジ打ちの仕事が直ぐに見つかり、家を出て3日後には働き始めた。


 働くこと自体独身以来で慣れない事だらけで失敗も多く、職場には沢山迷惑かけてしまったけど、働くことは楽しくて仕方なかった。








 働き始めて2週間経過した週末、長女と長男と喫茶店で待ち合わせた。


 二人とも、私が家を出る前と比べて変わり無く、安心した。


 長女は、私の事を心配してくれた。

 長男は、早く自分も家を出たい。私と一緒に暮らしたいと言ってくれた。



 引っ越すにしても学校の事などが有るため、二人の希望を優先することにした。

 二人とも今の家を出て、私と一緒に暮らすことを選んでくれた。

 今はウィークリーマンションなので、早めに3人で住む部屋を探して、契約次第3人で引っ越すことになった。



 最後に旦那の話になったが、今のところ子供たちに暴力を振るうことは無いそうだ。

 食事は一人で外食ばかりしているそうで、洗濯物なんかはしているのを見た事ないとのこと。

(子供たちは自分たちの分だけ洗濯している)



 旦那に殴られ衝動的に家を出てきてしまったが、全く後悔していない。






 喫茶店を出て別れる時、長女が「おかあさん、今までごめん。 私、大学行けなくてもいいから。 これからはアルバイトしてお母さんに協力するから」と言ってくれた。




 私は泣きそうになったけど、ぎゅっと奥歯を噛みしめ「大丈夫よ。あの人と離婚して共有財産ふんだくってやるから。あなたは進学すること考えて勉強しなさい」と伝えた。




















 お終い。















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旦那に「出ていけ!」と言われたので旦那の愛車に乗って家を出た。 バネ屋 @baneya0513

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