第21話 スピン・スピノ

第2回戦佐々木悠里VS戸増樋野

「あ、あのお手柔らかに……お願いします」

 悠里は緊張しているのか、弱々しい声で樋野に言った。

「そうか、よろしく」

 そう言うと樋野は腰に紺色の水晶が入ったバックルを出現させる。

「竜装」

 すると樋野は鎧を纏った。

 その鎧は半魚人とトカゲを混ぜた様でどことなく獰猛さがあった。

「………竜装鎧スピノ。そう言われてる」

 樋野はブーメランの刃を軽く撫でた。


 その頃食堂では、ケラトとルシファーが、カウンターでそれぞれ注文していたものを待っていた。

「あいよ、ちゃんぽん2個ね」

 厨房から店主と思われる中年のおじさんが、ラーメンの器に入ったもやしが少し多めのちゃんぽんを出した。

 2人は割り箸を割り、麺を啜った。

「……これ野菜いるか?」

 ルシファーがほぞっと呟く。

「当たり前だろ、もやしが麺と合うんだよ」

「そもそもこんなにもやしいらねぇだろ。そもそも野菜そんなに美味しくねぇ気が…」

 そう言うともやしを食べながらケラトはルシファーに言う。

「おめぇもやしの大切さ知らねぇのか?!そもそもな、ちゃんぽんってのはもやしが……」

「あーわかったわかった。もやしは美味いんだろそーだろケラト」

 厨房の店主はケラトにこう言った。

「兄ちゃん、もやし好きなら足すよ」

「いや、この量が良い」

 ケラトは店主に睨みつけて言った。

「そうか、なら良いか」

 その後も2人は黙々と食べていた。

 ルシファーがスープを飲もうとして舌を火傷したのは少し後の出来事である。


 そして場所は戻り、地下室での模擬戦は、悠里が苦戦を強いられていた。

 樋野はブーメランを鈍器の様に扱い悠里に無言で叩きつける。

 悠里も竜装し、杖で何とかそれを防ぐものの、少しずつ押され始めた。

「パウパウル……パルシェント……っ!」

 悠里は必死に呪文を唱えるが、そんな事お構い無しに樋野はブーメランで殴り続ける。

「おいおい、やり過ぎだろあいつ」

 二野目は青ざめながら言う。

「竜装鎧スピノ、またの名を『獰猛の鎧』その残虐さが故に竜世界でもその名を知らしめている」

 セトルはそう説明した。

 悠里は吹き飛ばされ、地面に打ち付けられる。

「パウパウル……パルシェント……パルル」

 そう言うと悠里の周りに結界のようなバリアがはられる。

 樋野はブーメランを飛ばし、バリアを破壊しようした。

 バリアの中で悠里はゆっくりと立ち上がり、両手を構えた。

「パウパウル・マルパー……」

 その時、ブーメランがバリアに突き刺さり、そのブーメランを樋野は取り出し、そのままバリア内に侵入する。

 兜の隙間から見えた、樋野の目は。

 まさに、だった。

「そこまで」

 映夢の声が地下室に響いた。

 樋野は竜装を解き、悠里も竜装を解いた途端、その場に倒れた。

「大丈夫?ちょっと本気出しちゃった」

 悠里は立ち上がると、すぐに手を振りほどいた。

 悠里は樋野に恐れるように逃げた。

 そしてすぐに椅子に座り、少し震えていた。

「どした?ゆーちゃん。樋野さんも本気出しちゃったんだしさ、そんなにビビることは無いだろ」

 しかし、悠里は震えた声で言った。

「あの人……本気で私を……」

「え?」

 二野目は悠里の言葉をそこまで気にする事は無かった。

 そして最終戦朱天羅VSセトル

 朱天羅とセトルはそれぞれの位置につき、バックルを出現させた。

「「竜装」」

 そして2人は竜装した。

 セトルの鎧は空色でとても美しい姿をしていた。

「竜装鎧……何?」

「竜装鎧ラジャ……ラジャサウルスの血を引く者が使える鎧だ」

 セトルは右手にナタを持っていた。

「……それで戦うの?」

 朱天羅は聞いた。

 セトルはナタの先端を向け、朱天羅に言った。

「無論、そうだ」

 すると、セトルの持っているナタが光り始めた。

「……不味いな」

 我道が言った。

「えっ……」

 我道は立ち上がり、そのまま逃げる準備をした。

「逃げるぞ、でないと死ぬぞ」

 悠里と二野目はすぐ様逃げた。

「早いね」

 我道は少し驚いた。

 朱天羅は盾を構えた。

「竜装鎧スティラコ……その硬さ、試ささてもらう」

 セトルは一気に間合いを詰め、盾にナタをぶつけた。

 その瞬間。

 恐ろしい轟音と共に、地下室は爆破した。



 その頃、間田コーポレーションでは。

 蓮は、小夜と再会していた。 

「小夜……」

To Be Continued

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