第16話 竜人保護管理局

 8月末、いよいよ夏休みも終わり、二学期に突入する時期。

 そんな始業式3日前の事。

 朱天羅の家にある手紙が届いていた。

「竜人保護……管理局?」

 

 同時刻 二野目家。

 二野目は夏休みの宿題の大詰めに差し掛かっていた。

「読書感想文……めんどくせー」

 縁側から日光がさす和室で、散らばる原稿用紙に鉛筆を当て、机に顔を突っ伏す。

 すると、原稿用紙をどかし、黒髪のポニーテールの女が氷の入った麦茶を差し出す。

 涼しげなTシャツに、短めのズボンで、歳は二野目より年上に思える。

「しずり……手伝って」

「なにを言ってるんですかしゅじ……二野目様。こうして学問をするのはあなたにとって大切なことなんですよ」

 彼女の名は佐川さがわしずり。代々二野目家に使える佐川家の人間で、現在二野目の従者として働いている。

 ちなみに彼女には剣崎けんざきという彼氏が居る。

「だって読書感想文ってなんの役に立つんだよー?」

「自分の感想や意見をしっかりと簡潔に、分かりやすく伝える為の練習です」

「いるかそんなもん?」

「必要です」

 しずりはきっぱりと言い、玄関のポストを確認しに行った。

 中には、一通の手紙が入ってあった。

「えっと……二野目潤様宛……」

 しずりは戻り、二野目に手紙を渡す。

「二野目様、手紙が届いでいます」

「えぇ?手紙……?」

 二野目は頭を気だるげに起こし、手紙を読む。

「竜人保護管理局………なにこれ?」


 同時刻 佐々木悠里の部屋

 彼女は枕代わりに様に勉強机に顔を載せ、学校で配られたPCにイヤホンを刺し、スピーカーを耳に着けたまま、すやすやとヨダレを垂らし、寝ている。

 PCの画面には、配信終了の文のみが映されている。

 カーテンの隙間から日光が差し、悠里は目を覚ました。

「………ふぇ?」

 悠里は時計を見るともう既に短針が10を通り過ぎているのを認知する。

「朝かぁ……」

 悠里は寝ぼけながらも玄関に向かい、外へ出る。

 すると、同級生とばったり出会った。

 悠里の隣に住む生徒は、生徒会所属でかつ同じクラスの生徒である。

「悠里ちゃんまた夜更かしてたね?」

「ま、まあ……」

「そろそろ学校だからね?生活リズムを整えなさいよ?」

「はぁい」

 悠里は未だに眠気が取れない中、悠里はポストの中を確認する。

 すると、珍しく親以外の手紙が届いていた。

「竜人……保護……管理局?」


 後日

 とある場所に3人は集まった。

 3人はそれぞれ大きめのキャリーバックを持っている。

「やっぱり、2人も来たのね」

「まぁ、竜人の血は引いてるしな…」

「後私達が知ってる竜人の血を引いてる人は……」

 3人は笑顔満開のケラト顔と、キメ顔ダブルピースを決める蓮の顔を思い出した。

(((あいつらだ)))

「蓮はとにかくさ……ケラトが来ないのおかしくね?」

「確かにトリケラ君は真面目だし……」

「同居してるからケラトが起こしてるはずだし……」

 二人の会話を聞いて悠里は、ちょっといいカップリングだなと思った。

 そんな中待っていると、大きめの黒いボックスカーが到着した。

 すると、降りてきたのは赤い制服らしき物を着て、下は黒いミニスカ、足は黒いタイツを履いている。

 顔はサングラスをかけており、金髪のツインテールである。

 体格はかなり小さく、中学生もしくは小学生に見えるのではと思える程だ。

「はじめまして、私竜人保護管理局副長のジュエル・リリア・アルフォンス・映夢えいむよ、よろしく」

 ジュリエルは堅苦しい口調で言う。

「よろしく」

 3人はとりあえずお辞儀をする。

「それぞれお名前は把握しております。朱天羅希愛智さん、二野目潤さん、佐々木悠里さん。今から竜人保護管理局に案内しますので」

 すると、二野目がジュリエルにひとつ聞いた。

「竜人保護管理局ってなんだよ、そもそも俺らを呼んでどうする気だ?」

「それは着いてから後々説明します。とにかくお乗り下さい」

 3人はとりあえずボックスカーに乗り、どこかへと向かった。

 車を走らせて数分後。

 3人が車から降りると、そこには、倉庫のような建物が建っていた。

「これ倉庫じゃん」

「大丈夫、中は改装してあるから」

 中に入ると、ある程度改造されたガレージで、コルクボードには大量の紙が貼り付けられ、隅には畳が敷かれ、ちゃぶ台が置かれており、真ん中には木製の簡潔なテーブルがあり、そこに1人男が机の上に座っていた。

 そして、ロッカーが8つあり、3つには名前が、貼ってある。

 更には筋トレ用の道具も多少あった。

 奥にも扉があり、キッチンかと思われる。

「手紙で伝えた様に、あなた達には少しの間ここに寝泊まりしてて欲しいの」

「んな事よりも、竜人保護管理局ってなんなのか教えろよ」

「名前のとおり、竜人またはその血をひく人間を、保護、管理する施設。とは言ってるけど、本当はあなた達に協力して欲しい事があるの」

「なんだよそれ」

 ジュリエルは椅子に腰かけ、言った。

「悪魔退治」

「「「…………え?」」」

「今伝えられるのはそれだけ、あとは局長が詳しく教えてくれる」

「局長頼りかよ……」

 二野目は少し愚痴を吐いた。

 朱天羅はジュリエルに聞いた。

「ところでジュゲムちゃん」

「………えっ私?!」

「そう、ジュゲムちゃん。ジュリエルうんたらだと長いし、ジュゲムなら言いやすいし」

 二野目は少し笑った。

「いいなその呼び方」

 悠里は親指を立てる。

「私はジュリエル・リリア・アルフォンス・映夢よ!」

「「「いや、ジュゲムで」」」

 ジュリエル・リリア・アルフォンス・映夢、早々に変なあだ名を付けられる。

「何故そんなあだ名に………」

 すると、机の上に座って居る男が3人を見た。

 その男は空色の髪で長い髪を後ろに伸ばし黒いシャツに白いスーツを着ていた。

 目つきは鋭く、まるで睨みつけるように見ていた。

「お前が連れてきた戦力とはこいつらだけか」

「ええ、そうよ」

「話にならんな。こんな奴ら、足軽にもならんぞ」

 すると、二野目が彼に噛み付く。

「あ?てめぇ舐めてると俺の忍法でボコすぞ?」

「ちょっにのくん……」

 男は、二野目を見ると机から降り、二野目に近づき、見下す。

「まだ歳も少ない小僧め、貴様の様な奴が感情のあるがままに戦場へ出た時、どうなるかわかるか?」

 彼は問いかけた。

「は?」

「答えは死ぬ、それだけだ」

「んなもんやってみねえとわからねえだろ」

「さあな、どういう形であれ、お前は死ぬ」

 そう言うと彼は、二野目の前から去る。

「おいジュゲム、あいつの第一印象最悪だが」

 ジュゲムおっと、間違えた。

 ジュリエルは頭を抱えながら言う。

「まぁ仕方ないわよ、ああいう奴なのよ彼は、名はセトル・ラジャルス竜装鎧ラジャの使い手で、竜騎士団1番隊隊長。元からああ言うプライドの高い男なのよ。座ってお茶でも飲みなさい」

 倉庫から出ようとする時、セトルは言った。

「そういえばジュゲム」

「あんたもそう言うの?!」

「気に入った」

「気に入らないで?!」

戸増樋野とます ひの我道最高がどう もたかは何処にいる」

「あの二人なら買い出しよ」

「そうか」


 その頃、商店街。

 大きな買い物袋を持った、紺色の目をした青年と、豆腐を持っている黄色の目をした少年が歩いていた。

「俺を誘ったのはもしかして荷物持ちの為……か?」

 紺色の青年は呆れ気味に言う。

「そうさ、今回は買うものが多い、その為に僕より力のある君に頼んだのさ。計画的に最高のプラン、そして今日は最高の材料で最高の味噌汁が出来る….」

 黄色の目をした少年は豆腐を空に掲げ、そう言った。

「僕は、我の道を行き、最高の存在になる者だからね」

 To Be Continued

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