2021・9/9・01:22

ハッピーサンタ

ZZZ……したい。

 コーヒーも飲んでいないはずなのに、今日は日付けが変わっても、眠気が襲って来ないようだ。いや、異様な程、ピンピンしていると言っても過言ではない。

 いつも、疲れきってるのに、今日はどうしてなんだ?何か特別なことがあったわけでもない。ん~?と、眠くない理由を考えるが、そんなのは、面倒臭いので、結局十秒も経たない間にやめにして、こうして、ここに文字を打ち込む。


『とにかく、0時過ぎても、全く眠くない!!』


 ブルーライトの光が、人間の眠りを妨げるなどと言うが、俺にはあまり関係ないようだ。

 だって、いつも眠る直前までスマホを扱っているが、すぐに悪夢の中に直行していくし、スマホを使わなくても、何故か、なかなか眠りに着けない夜もあったわけだし。


 はぁ~。全く、こんな時間帯に元気になっても、仕方がないつーの。


 今のこの元気を、どうやっても次に迎える朝に持っていきたいところだけど、きっとそれはできそうにない気がする。

 なにせ、俺はかなりの気分の変わり屋だ。同じ感情を、考えを、意思を、明日へと繋げていくのが、下手くそな人間なのだ。

 だから、俺はネット小説作家歴一年以上が経った現在でも、こうして長編を書くことができず、その日の、その時のうちにしかできない短編しか創ることができない。


 最初にできたプロットに、一生、自信が持てれば、プロットを作らずとも、毎日書いていった作品を上手く、その都度、その都度、繋げていくことができたなら──。


 でも、俺にはそんなことができる力がない。毎日書き続けることができるだけでも、それは才能だと思う。


『──俺もいつか、長編小説が書けるようになりたい』


 仮に、それができなくても、日々を繋げていくことができる人になりたい。

 嫌なことが起こったら、すぐに、ゲームのようにリセットしたくなる、この人生。

 でも、都合の良いところに、ロードはできない。過去改変はできない。


 眠りに着く前、つまり、記憶が飛ぶ直前に、セーブされ、目が覚めれば、ロードされる日々。


 楽しいことなんてなくて、幸せがなんなのかすらわからずに、ただただ辛いことが多い道を辿って行く人生。


 だから、毎日を繋げて、物語をハッピーエンドに持っていくだけでも大変で。


《―ハッピーサンタ―》とか言う、自分が名付けた自分のペンネームにすら、疑問を感じてしまう、こんな俺はギリギリを生きてる人間で、誰のことも幸せにできていない。


 ──そう、今、この文字を刻んでいる0時43分のこの暗がりの景色のように、俺の目の前は、黒一色。


 正直、なにもかもが、どうでもよくなる。


 味方はゼロのままなのに、敵だけ増え続けていく、この世界で、俺はこのまま──、


 ──眠りに着くことは、まだできなかった。


『──このままじゃ終われない』


 臭い言葉だが、何故だか、俺はこの言葉が嫌いではない。


 わからない。わからない。わからない。

 ──わからないことだらけ。


 できない。できない。できない。

 ──伝えたいことは、どうしても言葉に変換することができない。


 それでも、日々は、人生は、物語は続いていく。


 ならば、一寸先の未来にバトンを手渡していこう。


 過去をバトンとともに握りながら。リセットなんてしなくて良い。


 だから、俺は、昨日を捨てずに、明日へ、とにかく歩くことにした。


 やっと、今夜の俺はセーブできそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

2021・9/9・01:22 ハッピーサンタ @1557Takatora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ