第53話 負け

「先輩にはちゃんと後戻りできないことを言いました。ってことで……部活作りましょう!」


うん。いきなり部活?とかなんか言い出したが……えっ?こいつ……今なんて言った?部活?と俺が思っていると……。


「部活。私たちの部活です」

「いや……部活?なんで?っかなんの?」

「パズル部ですよ」


――こいつ……マジで何言ってるんだろう。と俺は思いつつ。


「いや、俺—―勝手にしてるだけなんだが……」

「せっかくだから作りましょう。面白そうじゃないですか。だからまず5人集めないとですね」

「いやいや部活って面倒じゃん」

「先輩。私の名前知らなかったたんですから。拒否権はありません」

「……」


ヤバイ。もう詰まったというか。俺に拒否権が本当に全くない状況だった。


「まあ5人集められないとー。ですが。とりあえず2学期から活動しましょう。だからまずは夏休み中先輩とデートしてあげますから。私のこと知るじゃないですかー。そして私も先輩のことを知ろうと思います」

「……なんかややこしいことになってきてないか?」

「先輩。まずデートです」

「俺のパズル時間が……」

「大丈夫です。その時間も考えてあげますから。ってことで……連絡先を交換すると先輩に私の事がばれるので、次回会う日を決めましょうか」

「……」


話がどんどん決まっていく……ってそういえば今日終業式だよな?なのにこいつはこの後というか来週の予定をという事は……夏休み中に俺と会おうとしているのか?いやいやマジで俺の平和な時間が――っか何考えてるんだ?こいつ。である。


「先輩無視するなら……こちらにも考えがありますから」

「怖っ」

「さあさあ、いつにしましょうか?私全部空いてますよ?」

「暇人かよ」

「先輩もでしよ?」

「俺家事するし忙しいからな?」

「あー、なるほど家事があるから。家に来いですか。なかなか大胆ですね。そして部屋に連れ込んで強制的に私に名前を吐かせる状況を作ると。うわー……最低」


…………こいつのことをさっき優等生とか俺は思った気がするが……訂正しておこう。やっぱり頭の中で変換がおかしい馬鹿。の方が正しい気がしてきた。

そうだな。わからないのにこいつを優等生とか自分より大きく見るのは……だよな。もしかしたら俺以下の可能性もなくはないんだからな。ちゃんと知るまでは……とか俺は思いつつ。


「何言ってるんだよおまえは、ってかお前もかなり変態だよな?」

「マジ最低ですね。先輩。こんなかわいい子に変態とか」


いや、まあそりゃお前……かわいいがな。変態だと思うぞ。だって妄想というか……なかなかやばいと思うし。うん。こいつ結構いろいろな事言ってるからな。なので俺は……。


「いやいや考えがやばいし」


と。言うと――。


「どこがですかー。ぼっちのパズル馬鹿の先輩に部活という居場所を作ってあげようとしているじゃないですか」

「全く頼んでないからな?」

「まあまあとりあえず……今度の月曜日1週間後。先輩暇ですよね」

「なんで勝手に暇と決めつけられるのか」

「暇ですよね?基本先輩は月曜日水曜日金曜日暇ですよね?」

「……」


こいつ俺の予定把握しすぎだろである。って……話がどんどん進んで行く怖さよ。


「無言ということでOKですね。じゃ1週間後の月曜日駅前広場に10時に集合ですよ」

「む……」

「無視した場合は。先輩に襲われました。という噂を流します」

「……この後輩怖い」


っか……なんでこいつこんなに楽しそうに、めっちゃ笑顔でこんな話をしているのだろうか。わざわざ夏休みに俺なんかと約束を取り付けて……。

ってか。まあ……そりゃこの後輩と居て嫌な気分には……ちょっとはなることもあるが……ウザいし。

でも、まあかわいいのはな。ちょっと、ほんのちょっと微々たるものだが……癒し的な。楽しみもなくはないからな。ってか。集合とか言っていたが……。


「っか。月曜に会って何するんだよ」

「あー。先輩まず美容院連れて行ってあげます」

「はい?」


――うん?やっぱりこいつが考えていることが俺には理解できないらしい。なんでいきなり美容室なんだ?と俺が思っていると…。


「先輩1万円くらい持って来てくださいね」

「はい!?おかしいだろ」


ヤバイ。これは……こいつもしかしてめっちゃ悪いやつで俺から金をむしり取るつもりか!という警報音が頭の中で鳴った。


「おかしくないですね。私と一緒に居るならそれなりになってもらわないとですから」

「意味わからん」

「とにかく。夏休みが終わった頃には先輩は私にメロメロになっているんですよ」

「……」


――こいつ何言ってるんだ?ってなんでお前にメロメロにならないとというか。そんなことにお前はして何になるんだ?である。


っか……ウザい後輩。と思っているが……うん。俺お前の事……嫌いとは言ってないと思うんだが……ウザさやその他もろもろ無くて……普通に居てくれるなら。別にずっと居てもらっていいというか……。


って……なんでこいつこんなにニヤニヤというか。笑顔でこっち見てるんだよ。謎だよ謎。


やっぱりこの後輩。かわいい見た目だけど。中身が謎。危険である。

以上。とにかく今のところは謎な後輩?に確保された俺。

って感じだな。マジで逃走する計画立てないとか……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る