第34話 忘れ物

水曜日。


今日も放課後になると俺は特別棟3階へと向かう。

そしていつも勝手に使っている教室に入り。

いつも勝手に使っている椅子に座り。

いつも勝手に使っている机の上に今やっているてんつなぎの雑誌を出して…。

いつものように続きを開いて…。


「…。あっ」


いつもように筆記用具が出せなかった。

カバンを見ても筆記用具なし…。ってことは…。

あれだ。教室の机に忘れてきたらしい。

カバンの中に入れた気もするんだが…。


と俺は思いつつも筆記用具がないとパズルがはじめられないため俺は立ち上がった。


そして今歩いてきた廊下をまた歩く。

まあなんかいろいろそのまま教室にほってきたが大丈夫だろう。

あの教室あいつしか来たことないし。

っか、こうやって歩いてると前からあいつ来るんじゃないだろうか。

そしてなんか俺捕まりそうな…。


とか思いつつ廊下を歩いたが…。結局あいつには遭遇しなかった。


自分の教室へとやってくるとまだ生徒は何人か残っていた。ちなみに特に再度教室にやって来た俺に視線が集まることはなかった。

そして俺はささっと自分の席に行くと…。


うん。普通に机の中に筆記用具があった。


なんか知らぬ間に入れたというか。なんとなく入れてカバンに入れるのを忘れたらしい。


無事に筆記用具を発見した俺はまた特別棟へと向かう。


先ほど歩いた時より廊下ですれ違う生徒が増えた気がする。まあ特別棟ではほとんど人が居なかったがな。とかそんなことを俺は思いつつ特別棟3階に戻ってくると…。


…。なんか俺がいつも座っているところにあいつが座り。パズル雑誌をパラパラ確認していた。


まあ別に触られたくないとか。そんなことは全くないのだが…。

あいつもやっぱ変わってる奴な気がする。とか思っていたら。


「1000…。だと」


とかなんかいう驚いた声が聞こえてきた。

って、どうやら俺が見ていることに気がついていない…。って、後ろからだから気がつかないか。それに廊下から見ているからな。


にしてもあいつ…。どの角度から見ても美少女だよな。なんでマジでこんなやつがここに通ってるんだ?謎すぎる…。って、こういう場合はどのタイミングで入ればいいのだろうか…。まあ幸いなことに廊下に他の生徒はいないので今みたいに立ち止まっている俺が怪しまれることはないだろうが…。なんか教室に入るタイミングがな。


まあ今来た感じ。

何も見てませんよ。


って感じで普通に入って行くのがいいか。


俺はここからのことをちょっと考えてから。なるべく自然な感じで…。


「何してるんだ?お前」

「あ、先輩。こんにちはー。今日はどこにいってたんですか?」


うん。

普通に入れた。あいつも普通に返事してきたから、俺が少し前から廊下に居たことには本当に気が付いていなかったらしい。


「ちょっと教室にだ。筆記用具忘れたから」


俺はそんな返事をしつつ近づいた。

すると…。


「なるほどなるほど。ってか先輩。なんでパズルばかりここ。この教室でしているんですか?」

「ここ空いてたから」


うん。そう普通にこの教室が空いていたから。ホント勝手に使っているだけなんだよな。マジでお前以外誰もこないし。先生とか全くここ来ないからな。


「やっぱり勝手に使ってたー」

「大丈夫だろ?何も言われないし。有効活用だろ」

「そのうち怒られますね。放課後にかわいい女の子連れ込んでるって、広まると」

「まあ大丈夫だろ」


とか言いつつ…。うん。確かにこれ俺が連れ込んでいる事になるのか…。っていやいや。別に俺は何もしてない。悪くないだろ。そうだよ。普通に居ればいいんだよな。よし普通に…。普通にだ。


「かわいいに全く触れない先輩」


あっ、悪い。違うこと気にしてたわ。とか思いつつ。って、別にこいつの見た目なら普段から言われまくってるだろうから…。

改めて言う必要はないだろうが。言わないで騒がれてもだからな。


「まあかわいいが。っか。どいてくれ。時間がもったいない」

「え…?あ…。はい…。かわいい…。かわいいですか」


俺が言うとなんか…。変な態度?にこいつなったんだが…。まあ席を譲ってくれたからいいか。これでパズルできるし。よし。パズル再開だ。


っか。ほんとにパズルを再開しないと。今さっきこいつの事をかわいいとか言った自分がなんか恥ずかしいというか。うん。居心地が悪いというかなんというか。とりあえずパズルに集中して落ち着くべきだな。


パズルパズルパズルパズルパズルパズルパズルパズルパズルパズルパズルパズル。

うん。


パズルパズルじゃなくて…。てんつなぎしてるんだから数字数えよう。パズルパズルなんか思っていたら数字間違えるわ。


って、そんなことを考えていたらなんか落ち着いてきたわ。うん。やっぱりパズルが最強かもしれない。


するとなんか…。前から視線を感じる気がするが…。これは気のせいと思うのがいいな。ってか手の方に視線がある気がするから…。あー、こいつ問題の出来上がりを待っているのか。ならまあスラスラいつも通りやればいいな。


っか…。そうだよな。俺を見ているんじゃなくてパズルの答えが見たくてこいつが待っているのなら…。俺はどんどんパズルをやればいいのか。

よし。今日はスタートが遅かったしどんどんやろう。


ってことで俺はどんどん問題を解いた。

そして俺の前で見ているやつも…。とくに何も言ってこなかったからいいだろう。

っか、マジでなんで見ているのが楽しい?のだろうか…。わからんやつだな。


♪♪~


とか俺が思いつつパズルをしていたら。いつものようにチャイムが鳴って…。って、マジであれから集中していたらしく。身体がバキバキ。

ってことで…。まあ帰るか。なので…。


「ふー。もうか。じゃ」


俺はずっと見ていたやつに一応声をかけた。


「あー、はい。お疲れ様でした」


俺がそう言うと、俺の前にずっと居たやつもとくに何もだったので…。俺は片付けをしてスタスタと教室を後にした。

って、あいつ…。下校時間になったのにまだあそこに居るつもりなのだろうか…。って別にあいつの勝手だからいいか。

いや…。でも普通下校時間だから…。帰るか?みたいなこと言ったら付いて…。来ないな。うん。来ないと見た。


それに一緒に教室出ても…。だよな。特に何かあるわけじゃないし。会話もないだろうからな。うん。俺の行動は正しかったと見る。さあ帰ろう。

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