第8話

「おはようございます!」

「おはよ」

 あれから俺たちは、俺が鹿戸で乗ってから涼花さんが星川西で降りるまでの間の34分間話をしている。

「今日は何読んでるの?」

「これです!」

 涼花さんはブックカバーを外して表紙を見せてくれた。ブックカバーを外してくれたのを見て、ああ、彼女のテリトリーに入れたんだなぁと感慨深くなる。涼花さんが読んでいたのは、ミステリー作家の最新作だった。

「あーこれ。ずっと読みたくて本屋探してるんだけど取り扱ってるところ少ないらしくて」

「貸しますか?読み終わってからで良ければ」

「え、本当!?是非お願いします!」

 涼花さんと話していると、神経衰弱で正解のカードを当てるようだった。趣味の合う人が俺の周りにいなかったので、ただただ趣味の話をするだけでも十分楽しい。

「恭介さん最近何読んでますか?」

「俺?最近はここのサイトで趣味で書いてる人の作品読んでるなぁ。プロ並みの文章を書く人もいる。新着から期待の新星を探すのにハマってるんだよね」

「へぇ、楽しそうですねそれ!帰ったら見てみます!」

『まもなくー、星川西ー、星川西ー、降り口はー、右側です』

 もうすぐ星蘭の最寄り駅。リミットが近づいてくる。

「あー、もう着いちゃいますね」

「話し足りませんね」

「帰りって恭介さん何時ですか?」

「部活ない時はアクアライン85号乗ってる」

「部活って何入って……あー!じゃあまた放課後会いましょう!」

『2番ホームからー、通勤快速アクアライン7号ー、天越行きがー、発車します。ご注意ください』

 アナウンスを背にぱたぱたと駆け降りる姿を見送る。


「放課後、か」

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