最終話 異類恋愛譚。アタシでしょ?/私ですよね?

「ゴメンナサイモウシマセン」

「ユルシテクダサイモウヤリマセン」


 深い不快な眠りから目覚めて体の縛りがすっきりと取れた後。俺は床に2人のクソ雑魚サキュバスを正座させて、腕を組んで睨んでいた。

 ガクガク震えるクソ雑魚共。絶対に許さねぇからなこの野郎。野郎じゃないか。


 とにかく、時刻は既に夜の11時。つまり一日の終わり近くまで俺は寝ていたわけである。

 ねぇ? 俺の自由時間どうしてくれるわけ? 何時間を無駄にされたと思うわけ?


「お前ら、今日という今日は許さないからな……」


「り、陸翔もけっこうノリノリだった感じが……」

「堕とされてましたよね? 私たちのこと好きですよね……?」


 堕ちていたって? いやあれ逆レイプだろ。認めない、俺は認めねぇ。

 俺はこいつらなんかに堕ちていません。ただ日常が楽しいと言っただけです、好きになったわけじゃありません。


「心より先に体で堕としてくる子は嫌いです」


 下品な堕とし方は嫌いです。そう告げると、セチアとクロユリは自分の種族の存在という尊厳を破壊されたのか、いつもより大声でわめいた。


「やだぁああああああああああああ!?」

「やぁあああああああああああああ!?」


 メンタルブレイク発動。もう最後にしてもらいたいもんだよ。お前らのいつもの行動結果のどこに、サキュバスとしての尊厳が存在するんだ……。


 やっぱりこいつら苦手だわ。

 でも俺たちのこういう騒がしい日常は、これからもこうして続いていくんだろう。お前たちと過ごす日常が好きだという感じのことを言っちゃったわけだし。

 もう後戻りできない答えを出しちゃった感じがする。


「で、結局さ。陸翔はアタシとクロユリどっちが好き?」


 急に素に戻るなセチア。なんかワンテンポ何かあった感じのこと置けや。お気楽思考かコイツめ。


「アタシだよね?」

「私ですよね?」


「いや、どちらにも堕ちたわけじゃないからな? 」


『ガーン!』と青ざめた顔になってショックを受ける2人。テンションが急上昇したり急降下したり目まぐるしいねホントに……。


「そ、そんなはずないよ。陸翔は絶対アタシに堕ちてたし……」

「何言っているんですか。お兄様は私に堕ちてましたよセチアさん」


「ふぅん? お子ちゃまなアンタの魅力に全然反応してなかったと思うけど? クロユリ」

「そっちこそ、力み過ぎて空回りしていたんじゃないですかぁ? オバサン高校生」


 ピクピクとまぶたを痙攣けいれんさせるセチア。クロユリは握っているこぶしをぶるぶると震わせながらもそっぽを向く。あぁ……この感じは……。


「高校生なのはそっちも同じでしょ! フシャー!」

「いつも化粧がケバいんですからオバサンです! シャー!」


 猫かよこいつら。両腕を挙げて威嚇すな、アリクイかよ。やめろ! 猫のように手を出すんじゃない!


「フシャー! フシャー! ふしゃべろきふぐっがへしゃっ!」

「ふぎはぎしゃべしゃはっ!」 


「やーめーろ! やめろぉー!」


 ガチの猫の喧嘩か! 猫又とかに改名しろお前ら! 物マネ上手すぎるわ!


 猫のような軽く速いパンチを繰り返し、ついに取っ組み合いになる2人。頬をつねったり体を押さえつけたり。組み合ったまま床をゴロゴロと転げまわって、もう目も当てられない。

 あぁ、また下の住人にお盛んだなぁと思われるんだろうなぁ。


 俺はこの散々な状況に頭痛を感じるしかないのだった。

 この日常、続いていくんです? 本当に続けていいのか? ……続くみたいだ。

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恋愛クソ雑魚お隣サキュバスさん達と過ごす日々 ~壁が意味無い状況はお隣さん同士と言えるのか?~ フォトンうさぎ @photon_rabbit

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