閑話「親友」

 俺は木陰で寝転がっている親友を見つけ、「おい」と声をかけた。風が優しく吹き、そよそよと葉は揺れた。


「アシェル! この間の試験はどうだったんだ? 」


 ばっと、起き上がるアシェル。体の所々には芝がくっついていた。


「ふっふっふっ、聞いて驚けウィル。……なんと満点だ! 」

「なにーっ! 」

「はっはっはっ。これは勝ったな! 」

「じゃなくてだな、俺も満点なんだ」

「……またかよ! 」


 仲良しだな、俺たち。そうアシェルは言った。さらさらの金髪も揺れる。


「本当にな。いつも点数同じじゃないか」

「なんでだろうなぁ」


 負けたくなくて必死に勉強したり、練習したりしているからだろう? そしてそれを微塵に感じさせないように振舞っていることを俺は知っている。本当に、凄いやつだよ、アシェル。


「なんだよウィル。変な目で見やがって」

「いやぁ、凄いなと思って」


 アシェルは首を傾げたが、ははっと軽快に笑った。


「そうか。でもな、お前様には負けるよ」

「様ってつけるなよ、気持ち悪いだろ」

「だって王子だろうが。普通は敬語で話すんだろ? 」

「だからってアシェルにそう言われるのは嫌なんだ」


 アシェルは俺と同じ目標を持っている、そう考えているから。せめてアシェルだけは対等に話していたい。


「じゃあこれからは言わないよ」

「ありがとう」


 しっかし、こんな日は昼寝に良いなあ。

 アシェルはそう言った。


「そうだな、風が気持ちいい」

「ああ」


 俺もアシェルも無言で、先にある王宮を見る。見慣れた、王宮。


「いつかお前はあそこで国王になるんだろう? 」

「そうだな」

「そしたら俺はお前の目となり、鼻となり、手となり、足となり、……やって行けたらいいな」

「それは俺の望むところでもある」


 大真面目に答えたらアシェルは笑った。


「俺はレヴィエストをシアルレや、モルビテに負けないくらいの豊かで、幸せな国にしたいんだ。それにはアシェルの力が必要なんだ」


 アシェルは今度は笑わずに、真っ直ぐ俺を見据える。瞳には晴れ渡った青空と俺が映る。


「そうだな、そうしよう」


 アシェルの言葉に驚いた。


「アシェル……」

「俺たちなら出来るって」

「……そうだな」


 おい何そんな顔してんだよ。

 その後、アシェルに背中を叩かれたが、俺の目から涙が止まることは暫くなかった。

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