第2章 新しい世界①
家族に会えるかもしれない、との思いにふけっているときだった。
それをかき消すように女が答えてきた。
「はい。AIがAIを開発したことで、科学と技術が人間の予想を超えて進化したのです。その素晴らしい科学技術のおかげで、あなたは再生することができたのですよ」
柔らかい口調での説明だったが、どこか恩着せがましくも聞こえた。
「AIが、AIを開発?」
オウム返しのように、訊き返した。
オウムと違ったのは、女の言葉が妙に、胸に引っ掛かった。人間の代わりにAIがAIを開発すれば、確かに技術が劇的に進歩するのは間違いない。だが一方で、進む道を踏み外せば、あのハリウッドのSF映画のような世界が現実のものとなる恐れもある。AIにAIを開発させるのは、あらゆる最悪の事態にリスクを完全に排除し、慎重の上にも慎重を期さなければならない。
まさかとは思うが。嫌な予感が過った。
「はい、そのおかげでテロや戦争、自然破壊も完全になくなりましたよ」
女が胸を張るようにしながら、今度は誇らしげな顔をして答えてきた。
だが、その言葉には、どこか影が、裏があるようにも、思える。
俺の、考えすぎか? そう自分に言い聞かせようとしたが、嫌な予感が押し寄せてきて真っ黒い影が俺の頭を覆った。
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