第2話 彼女の本音

 

 俺は海沿いをバイクで走行している。俺の名前は渥盛拓哉、大学生。

今日、女の子に振られたばかりの冴えない男である。

 俺はある女性と海岸で出会った。何故か、俺の息子には宇宙人が取り憑きその宇宙人が俺以上にコミュ力が高く、女性の悩みを聞く流れになり、今その女性がいるであろうファミリーレストランに向かっていた。

 俺は言われた場所に到着。さっきの女性の車を探し、いることを確認した。本当にいた。

『当たり前だろう、馬鹿者』

「いや、普通そんな事言われたら不審に思ってバックレるだろう」

『お前、女性の気持ちが分かっていない』

「あのぉ。宇宙人のあなたに言われるとすごく凹みます」

『さっさと入れ』

 俺は、バイクを駐車場に置くと店内に入り、スーツ姿のさっきの女性を探した。

「こっちよ、こっちーーーー」

 俺は呼ばれた席に向かう。俺は絶句した。

「くせー。ってか、貴女さっき運転してましたよね。帰りどうするんですかっ!」

「ここ⤵24時間だし朝までここで過ごして明日休むー→。それか、あなたがバイクで送ってくれるんでしょ?」

 女性は完全に出来上がっていた。

「えぇ。何でですか?」

「さっき、あなたが話聞くって言ったじゃない」

「あぁ、まあ。そうでしたね」

 俺が言ったんじゃないけど、とにかく話を合わせる。俺の息子(宇宙人)が勝手にやったことだしと思っていると喋り出す。

『で、何があったんだ?話してみろ』

 俺は慌てて、口パクをした。いきなり喋るなよ。

「聞きたい⤴、そんなに聞きたいの⤵」

 声が歌みたいになっている。

「私の名前は⤵阿澄亜沙子。28歳会社員よ→。今日は年下の彼とデートしていい雰囲気だったのに、最後にフラれたのよ。うがー」

 阿澄さんはいきなり切れだしその場で暴れ出す。俺はそれを見て、落ち着くように説得した。

「他のお客さんに迷惑かけますから、やめましょうね、ね。どー、どー」

 俺は何とか阿澄さんを押さえ、店員さんや他のお客さんに平謝りをした。

 なんで俺が。今日は災難日だよ。

『なるほど。しかし、おぬし、その男本命ではないと見た』

 何いきなり言ってんだよ。俺は俺の息子に怒ったが意外な言葉が返ってきた。

「何、わかってるじゃん」

「は?」

「ホントわね。私、同期の公平が好きだったの。でも、後輩も可愛いからこっそり二人と付き合ってたの。でも、二人と付く合ってたことバレて、年下の彼に知られフラれた。そして本命の彼にもそれがバレて、電話でフラれた。うあーーー」

「自業自得じゃないっすか」

 阿澄さんは叫びながらビールを飲み干す。その姿に俺は「うぁ」と引く。

『なら、今日でそのことは忘れ。次の恋を探すのだ。私が手伝ってやる』

 俺の息子がこれまた、話を勝手に進める。

「本当⤵いいの?」

 俺はむしろ自分の恋を探したいんだけど。

「勝手に喋るなよ。え、あ、いいですよ」

 俺は自分の息子に小声で文句を言ったつもりだったが了承してしまった。

「やったー、ありがとう」

 阿澄さんは俺に喜びのあまり抱き着いてきた。しかし、その息が酒臭くキツイ。流石に、これは店側にも迷惑なので店を出ることにした。

 しかし、何故か支払いは俺だった。阿澄さんは酔いふらふらだった。ファミレスの店員さんには車はあとで取り来ますので置かせて下さいと俺が頭を下げ、許可をもらった。なんで俺が。

『払ってやればよかろう』

 俺の息子が俺に言ってきた。

 俺はバイクだったので阿澄さんにヘルメットを被ってもらい、家まで送ることにした。二人乗りは彼女になるはずだった子を何度も乗せたことがあるので問題ないと思うのだが、阿澄さんは現在進行形で酔っているので絶対に俺から手を離さないで下さいとお願いし、バイクにまたがる。阿澄さんは俺の後ろで「ふぁーい」と元気よく手を挙げた。

心配だ。

「じゃあ、行きますよ。絶対離さないで下さいね」

「おぅ、いけいけーーー」

 俺はバイクに阿澄さんを乗せ、発進する。バイクで風を切り、言われた住所に向かう為に大きい国道を西へ向かった。安全運転で向かう。

約、15分位はバイクで走った。言われたところは少し駅からは離れた集合住宅に着く。駅周辺にもアクセスしやすい立地で有名なハウスメーカーの集合住宅で家賃もおそらくそれなりに高いだろう。

 俺はバイクのエンジンを止めると後ろにいる阿澄さんに声をかけた。

「家に着きましたよ」

「・・・・」

 阿澄さんの反応が無かった。

「どうしたんですか?」

 俺は後ろを振り向くと阿澄さんの顔色が真っ青になっていた。阿澄さんは口を押えていた。

 もしかして・・・

「吐きそうですか?」

 俺は直球で聞いてみる。阿澄さんは顔を縦に振る。

「今ここで吐かないで下さいよ」

 俺は自分のカバンの中に入っているコンビニのビニ袋が入っていたことを思い出し、探る。

『早く袋を出してやれ』

 俺の息子も事の重大さを察したか、俺を焦らせる。

「も・・・もう、無理」

 と言った瞬間、阿澄さんの口からはここでは表現できない水分が俺にかかるのが見えた。それは凄い射出で俺の服全身にかかった。

「ごめん、ごめん」

 阿澄さんは俺に誤り続けた。お腹の中のモノを出したことで酔いが覚めたみたいだ。

「何で、こんなことに・・」

 俺の気分は激下がりだ。泣きそうになる。

 阿澄さんは弁償したいと懇願し、今度お礼がしたいから連絡先を教えて欲しいと言われた。俺は阿澄さんと電話番号を交換した。

 流石にこの服で部屋まで行きたくないので、俺は阿澄さんに自分の部屋に自分で帰れますよねと確認する。

「大丈夫。ごめん。ホントごめん。本当にごめん」

 阿澄さんは大丈夫と言いつつ、何度も俺に誤ってきた。

 俺は早くこの場から去りたいので「また今度連絡します」と言い残すとバイクで自分の家に帰宅した。

 バイクのサイドミラーには阿澄さんが俺が見えなくなるまで頭を下げていた。

 俺は阿澄さんのここでは表現できない水分が服から匂うのを我慢してバイクを走らす。俺もこの匂いでもらいそうになるが我慢する。

「また今度、連絡しますって言ったけど、どうするかなー」

『してやれ』

 俺の息子が意見してくる。

『向こうが謝罪とお礼をしたいと言っておるのだ快く貰っておけ』

「元はと言えば、お前のせいだろ。こういう風になったのは」

『可哀そうではないか』

「俺が可哀そうだよ。お前が取り付いたと思ったら、何故か全然知らない人の愚痴を聞かされ、他人の飲み代を俺が払って、家まで送りったと思ったらゲロまみれなって。今日は散々だよ」

 俺は俺の息子に愚痴る。

『まぁ、今日は良しとして帰るぞ』

「何で、お前は宇宙人なのに俺より人間臭いんだよ」

 俺は納得いかない状況だったが、記憶に残る一日だった。今後、あの阿澄さんと深い関わりになるとは思っても見なかった。

 俺は自分の家に向かう為に、バイクを加速させるのであった。


 



 

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