俺のち〇こは宇宙人

穴一

第1話 宇宙人を見た

 ある日の夕暮れ・・・

 俺の名前は渥盛拓哉。どこにでもいる大学生。俺は今、悲しみを癒すために海の見える公園に来ていた。今日友達だった女の子にデートを申し込み、何とか二人のデートまでこじつけたんだけど最後の告白で失敗し、フラれた。

 俺は、その悲しみを波の音を聞きながら、癒していた。

 いつもそうだ。俺はいざという時になると失敗をする。

 今回は最後の告白のタイミングで尿意を催し、トイレに向かったのだがズボンのファスナーが壊れ、上がらなくなってしまった。仕方なく、女の子の元へ戻り、いい雰囲気になったのに・・・

 告白のタイミングで社会の窓が全開なのを知られ、ただ、あなたは行為をしたいだけなんでしょ!とビンタを食らい女の子は怒り帰ってしまった。謝罪をしようとSNSでかけたのだがブロックされていて取り付く島もない状態に陥っていた。

「海のバカヤロー」

 俺は地平線に向かって叫ぶ。海風が吹くだけで虚しい。

 もう帰ろうかなと思った。その時だった。

『おい、お前。俺に食われろ』

 どこからともなく声がし、俺は周囲を確認する。周囲には砂浜が広がっていたが、一か所だけおかしいものがあった。

「何だ?」

 そこには、所謂、使用済みのゴムみたいなものが確認できた。

『お前、俺が食ってやる』

 そのゴムが俺に喋りかけていた。

「うわ、なんだお前っ!」

『俺は地球外生命体だ』

 このゴム宇宙人かよ。俺は腰を抜かしそうになったがそのゴムとは反対方向に逃げた。誰かに助けを求めないと。俺は走った。だが、予想よりも宇宙人は早かった。俺の目の前に現れた瞬間、止まろうとした足が砂に囚われその場で転倒してしまった。

 俺は転んだことで一瞬、意識を失った。俺は頭の中の声で意識を取り戻す。

「痛っ。さっきの宇宙人は」

 俺は起き上がり周囲を確認する。居ない。何だ、夢だったのかと思ったその時だった。

 俺の股間のモノがムズムズした。

 こんな時に、何だと思うと

『何だ、ここわ』

 俺の息子が喋り出した。どういう事だ。俺は無い頭を必死にフル回転した。

 俺はこの考えに至った。さっき俺が転倒した時に丁度、股間の部分にこの宇宙人がぶつかり合い融合してしまったと思われる。しかもチャック全開だったこともこの状況作ってしまった。

「どうしてだーーーーー。どうしてこうなったぁーーーー」

 俺は海に向かって叫ぶ。俺は今まで生きていて、いい事なんて無かったのに

この仕打ちひどくないですか、神様。

『それは私のセリフだ』

 俺の息子が喋る。昔、主人公が転んで服にカエルが入ってしまうという漫画があったのを思い出す。しかし、これは酷過ぎる。あれフィクションだよね。

 俺はその場で膝を落とし、むせび泣く。

『馬鹿、やめろ。泣くんじゃない。泣きたいのはこっちだ』

 俺の息子が喋ると俺の泣き声が大きくなった。

『分かった。もう泣くな。こうなってしまったものはしょうがない。気分を切り替えろ』

 俺は俺の息子に慰められる。何だ、この人生。

 俺はその場で体操座りをしていた。


 その時だった。


 俺の隣にスーツ姿の女性だろうか、パンプスを脱ぎ。ストッキングで走って波打ち際、止まる。

「公平のバカヤロー、死んでしまえーーーー」

 彼女は海に向かって大声で叫んでいた。その目には涙が流れていた。

 さっきの自分の姿に投影する。そして、彼女はその場でしゃがみ込んだ。

 多分、俺がいることに気付いていないんだろう。彼女はその場お構いなしにでワンワンと泣いていた。

 俺はどうしよう。と思ったその時だった。

『そこの人、大丈夫か?』

 俺の息子が勝手に喋り出す。俺は、顔だけ彼女の方に向ける。彼女も声に気が付いたのか、涙を拭き顔をこちらに向けてきた。

 涙を拭いたことで顔のメイクがぐしゃぐしゃになって、怖かったがよく見ると顔だちもよく可愛かった。

「何で勝手に喋るんだよ」

 俺は女性に聞こえないように小声で俺の息子に話しかける。

『人間の乙女が泣いているんだ。気にならんのか?』

「気になるけど、順応性高すぎだろ」

 俺の息子に入った宇宙人が俺の人間性より、まともな意見で驚かされる。

「何っ、あんた」

 彼女は睨んできた。俺は口ごもる。

『あなたは何故泣いているのだ。そんなに悲しいことがあったなら話してみい』

 俺の息子は勝手に喋り、俺はその喋りに口パクを合わせる。しかし、何か口調がじじ臭い。

「何であんたに話さないといけないのよ」

 ごもっともな意見で、ぐうの音も出ないはずだが俺の息子は話を続けてた。

『人は人に話すことで、自分を落ち着かせることが出来る。多少、吐き出せば気分も変わると思うぞ』

 何で人間の俺より、人間力高いのっ。

「・・・・・・そうね。聞いてくれる、少年」

 彼女はそう言うとスーツに付着していた砂を払い、着いてきてと俺に言ってきた。

 俺もその場を立ち上がり、付いていくことにした。彼女はこのファミレス行くから付いてきてと言って車に乗り込んだ。

 俺は、バイクでここまで来ていたので後を付いていくことで話が付いた。

 俺の息子には宇宙人が宿ってしまったことでまさかの展開になるなんて誰も思っていなかった。

『着いていけ。少年』

「うるさいよ、静かにしてろ」

 俺は自分の息子に話しかけると彼女の車を追うため、バイクにまたがった。

 

 


 

 

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