閑話04.二人の出会い②

「魔王??」


 クラウスは少女が名乗った魔王という肩書に驚いた。

まさかこんな辺境の村で、捕らえられた魔王と出会うとは全く想像もしていなかったからである。


「うむ、わらわが魔王じゃ。

 まさか魔王がこんな幼子おさなごとは思わなんだか?」


「ん、あぁ、それもあるんだが……

 なぜこんな辺境の、しかもこの程度の実力のやつらに捕まっているんだ?

 魔王は強いもんだと思ってたけど……」


「あぁ、そういうことか。

 わらわたちは一切の抵抗をせずに捕まったからの」


「は??」


「わらわが魔王に就任したときに決めたのじゃ。

 これからの魔族は人族と​仲良くする道を選びたいとな。

 そのために我ら魔族はいくつかのグループに分かれてひっそりと隠れ住むことを選んだのじゃ。

 人族を刺激せずに、人族からの悪意が消えるまでな」


「その結果がこれか……」


「そうじゃの」


 フェリシアは寂しげに笑いながらそう言った。


「俺は王国各地を旅して魔族などの人族以外の種族の酷い扱いを目の当たりにし続けてきた。

 あいつらは何か悪いことをしたのか……?」


「おそらくじゃが、何もしておらんじゃろな。

 しいて言えば人族の機嫌を損ねた…… ぐらいかの」


「なぁ、魔王よ、教えて欲しい。

 俺は二年前に二人の幼馴染とともに女神の神託を受けた、文明崩壊からこの世界を救えとな。

 俺は人族の文明を支えなければならないのか?」


「女神の神託なんぞ、わらわに聴かれても困るのじゃが……

 別におぬしの思うがままに生きれば良いのではないか?」


「?」


「女神はいうことを聞かなかったら、おぬしの命を取るほど度量の小さい存在でもなかろうに。

 それにこの世界がいにしえより文明崩壊の連鎖を続けていることは魔族も把握しておるが、その文明が人族のものであったとは限らぬのじゃぞ?」


「そうなのか!?」


「ちなみに前回の文明崩壊で滅び去ったのは、魔族の文明であったと聞く」


「その後、人族が世界を復興させて、支配者ぶっている…… ということか」


「おそらくの」


「ということは……

 人族を滅ぼして、それ以外の種族による新しい文明を栄えさせる。

 これでもいいのか?」


「人族であるおぬしがそのようなことを言ってるのは不思議じゃがな。

 そもそも女神の神託は守らなければならぬほどのものなのかの?」


「さぁ?

 でもせっかくだから守ってみたいとは思っていたんだが……

 俺にももう人族を許すことができない……」


 クラウスは俯き、力いっぱい握りしめたこぶしは小刻みに震えていた。


「おぬし……

 いや、クラウスよ」


「ん?」


「今回のことでわらわも考えを改めようと思っておる。

 わらわの【人族とともに歩む】という選択が誤りだったとな」


「なら……

 俺と一緒にみんなに謝罪をしに行かないか??」


「!??」


「魔王……、いやフェリシアよ。

 俺と共に旅にでないか?

 各地の魔族に謝罪し、そして人族を滅ぼして魔族を中心とする他種族国家を作らないか?」


「クラウス……

 何を言っているかわかっておるのか?

 そのようなことできるわけ……」


「俺たちが手を組めばできるさ!」


「……」


 クラウスは手を差し出し、フェリシアの目を真っすぐ見つめながら言った。


「フェリシア、俺と共に人族を討とう。

 それには色々と苦しみも多いとは思う。

 でも、全ての喜びも罪もとがも……

 全てを二人で分け合って背負う、そんな誓いを交わしたい」


「クラウス……」


「誓ってもらえるなら、この手をとってくれ」


 一切ブレることのないクラウスの視線をまっすぐと受け止めたフェリシアは、クラウスの手をそっと掴んだ。

そして、そのままその手をひっぱり屈ませるかがませると、そっとクラウスの頬に口づけをした。


「クラウス、わらわはおぬしのことを気に入ったぞ。

 これからわらわとおぬしは運命共同体じゃ。

 これからよろしくな!」


 フェリシアは満面の笑みを浮かべていた。

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