21話.決別
クラウスに
人族に弓を引いた魔王を左手で抱きかかえながら、右手では幼馴染であり仲間でもある自分たちに槍を向けていることに。
「クラウス……
本気なのか?
本気で人族を滅ぼすというのか?」
「むしろ何故こんなにも愚かな種族を助けなければならない?」
なんとかして絞り出されたアイオンの言葉であったが、クラウスはそれをあざ笑うかのように斬って捨てた。
そんな言葉を放つクラウスを見たアイオンは、怒りや憎しみなどの暗い感情をその横で微笑んでいるフェリシアへと向けた。
「きさまか……
きさまがクラウスを
右手に
しかしアイオンの斬撃がフェリシアに届くことはなかった。
「アイオン、てめぇ!!!
フェリシアに剣をむけるってことの意味がわかってんだろうな!!!」
クラウスは武器を握りしめ、突撃して来たアイオンの斬撃を聖槍で受け止め、そのまま弾いた。
「あの悪しき女の倒してお前の目を覚まさせる、それだけのことだ。
そのためには、一度お前を無力化する必要がありそうだな」
アイオンはクラウスの怒声に静かな声で応えた。
アイオンとクラウスが正面より対峙し、2人は真剣なまなざしで互いを睨みつけた。
2人が一歩踏み出そうとしたその瞬間、その横を炎の塊が横切っていった。
「アイオンはクラウスを押さえておいて。
ボクが……
あの魔王を倒すよ」
完全に
しかしその炎がフェリシアに届くこともなかった。
「その程度の魔術でわらわの障壁は突破できぬよ。
クラウスよ、この勇者さまたちには少し痛い目にあってもらうぞ」
フェリシアはクラウスの隣に移動すると、それぞれの手に巨大な火球を作り始めた。
どちらの火球も先ほどファウストが放ったものの倍以上の大きさである。
アイオンたちの目がそれに奪われている隙に、クラウスはアイオンの胸元まで飛び込んで右手にて突きを放った。
二人の見事な連携に驚きを覚えたアイオンだったが、聖剣にてギリギリ受け流すも続けざまにフェリシアは二人に向かって巨大な火球を放った。
ファウストは障壁にてなんとかそれを凌いだが、体勢が崩れていたアイオンはそのまま飲み込まれるしかなかった。
「ぐわぁぁぁ!!!」
「アイオン!!!」
炎に包まれているアイオンの元に駆け付けたファウストは、水魔術で彼の身体を包み込んだ。
全身にひどいやけどを負ったアイオンはそのまま膝をついた。
「その怪我でよく気を失わないのはさすが勇者さまやのう。
でも二人がかりでこの程度じゃ、話が違うではないかクラウスよ」
フェリシアはクラウスに寄り添いながら甘えるように囁く。
そしてフェリシアの手が光を放つと、アイオンとファウストの怪我がたちどころに癒えた。
「この村を占領したのはお前たちを呼び出すためだけだ。
無事にこうして俺が魔王と手を組んだことは伝えれたし、もうここに用はない。
フェリシア、帰るぞ」
アイオンが何か反論する間もなく、二人は光に包まれその姿を消してしまった。
「て、転移魔術……?
魔王はそんなものまで使えるのか……」
圧倒的なまでの力の差と仲間に裏切られた衝撃に二人は心が折れ、しばし放心してその場で
しばらくして少し冷静さを取り戻した二人は、サ・イハテノ村に向かう。
近づくにつれて村の状況が少しづつわかってくる。
破壊のかぎりが尽くされた村。
鼻を突く強烈な死臭。
「クラウス、なぜここまで……」
村に入ったアイオンはあまりの光景に思わず絶句する。
村の住人の姿はなく、悪臭を放つ肉の塊が転がっているだけだった。
「これが魔王たち魔族が人族に抱いた憎しみ…… ということか」
あまりの光景に絶句しつつも埋葬を行う二人。
すると、そこにレムリアが率いる騎士団が到着した。
一目で状況を理解したレムリアは言葉少なめに王都へ帰還するように促すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます