第44話 下着泥棒

“しかし、穏やかな日は長く続かなかったんだ。”


と言ったな。

あれは嘘だ!


ああ言っておけば、おっ次から急展開か!話の流れ的に嫌な事が起こるのか!って思うでしょ。


僕はそういった前振りが嫌いだからそのフラグをへし折ってやったのさ!


“僕たちの運命の日がもうすぐそこまで来ていたから…”


と言ったな。

それも嘘だ!


運命の日だなんて後になってしか分からへん!

ああ、あの日が運命の分かれ道だったな〜〜って

歳をとってからじゃないと気づかないから。


というわけでいつもの日常です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「今日限りでゆずるは首だ!いわゆる解雇な。」

「ええええ〜〜〜〜〜」

全然いつもの日常じゃなかった。


「不潔です!ゆずるさん!略してフケツゆずる!」

「全然略してないですけど!」


「昨日私の下着が盗まれまし…」

「僕じゃ無い!」


「喰い気味に否定ですか、怪しいです。」

「怪しくない怪しくない!必死さだよ。」


「正直に言え!お前が盗んだんだろう!」

「なんでレイ君はちょっとキレ気味なの?」


「ゆずるが認めないとオレに火の粉が降りかかるだろ。」

「だからといって解雇は行き過ぎだよ。目の前から消しても解決にはならないよ。」


「私もゆずるだと思います。」

「なぜ指名!本人が直接指名してきた!証拠はあるの?」


「証拠ですか、みなさん目をつむってください。」

「3人しかいないけどね。」

僕は目をつむった。


「それでは僕が盗みましたという人は黙って手をあげてください。」

「証拠がまさかの自己申告制!」

僕は目をつむったまま突っ込む。


「わかりました。みなさん目を開けてください。」

「3人しかいないけどね。」


「犯人はゆずるでした。」

「まさかの濡れ衣!僕は手を上げて無いよ!」


「私たちはゆずるを見ていたのです。嘘をついていないかどうか。」

「まさかのグル!目をつむっていたの3人中、僕1人だけ。」


「正直に美少女である私の下着が欲しかったと言ってくれればあげませんけどね。」

「これだけは、これだけはいいたくなかったけど…」

「どうしたゆずる、とうとう白状する気になったのか。」

僕は二人を順にゆっくり見てから思いの丈をぶつけた。


「僕は下着に全然興味なんかないんだよおおおおおおおお。」

「「なっ、なんだって〜〜〜〜〜」」

二人がハモる。


「僕は本当に下着に欲情する性癖は持ち合わせていないんだ。僕が欲情するのはその中身だけなんだ!もちろん下着のチラリズムは好きだよ。でもそれは中身とセットで欲情するという事なんだ。中身の無い抜け殻には僕は全く興味がないんだよおおおおおおおお。」

僕は力いっぱい力説した。

最後にビブラートまでつけて。


「「変態や、ここにホンマもんの変態がおる」」

「いや、二人とも落ち着いて。冷静に考えれば下着に欲情する方が変態じゃない?」


「でも、誰でもいいわけじゃなく自分の好きな人の下着だから抜け殻とはいえ欲情するのが普通じゃ無いの?」

「ん〜〜〜それは悩むな。一理はあるかもしんない。好きだったら欲情するか?んんんんん。」

「そんなに悩むことか?」

レイ君が気安く言ってくる。


「僕が下着泥棒にされる瀬戸際だよ!なおかつ解雇までさせられそうだし。」

「わかったわゆずる。今素直に盗んだと認めたら許してあげるわ。」


「いえ、盗んでいません。」

「美少女の可愛いピンクの下着上下セットを盗んですみませんと謝ったら許してあげるわ。」


「いえ、興味ありません。」

「キュピス」


ジュンーーーーー


「やめろ!いきなり魔法を撃って殺そうとするなよ!」

「失礼だわゆずる!略して失礼ゆずる」


「略してないけどな。」

「わかった、失礼ゆずるは盗んでないだろう。」

レイ君はわかってくれたようだ。

失礼ゆずるは言わなくてもいいけどな。


「じゃあどうして私の下着だけ失くなるのよ。」

「ん〜こころの部屋は5階だからな。外からの侵入は考えられないからこそのゆずる犯人説だったのだけどな。」

「犯人説もなにも犯人と決めつけてたからね、僕を。」


「すまんゆずる、消去法で考えたらゆずるしかいなかったんだ。」

「社会的にも消去されそうになりましたけどね。」


「スマソスマソゆずるスマソ。」

「だからスマンの“ン”が“ソ”になってるから、全然謝る気ないでしょ。」


「だとしたらいったい…。」

「こころの部屋に洗濯機があるの?部屋干し?」

僕はこころに聞いてみた。


「部屋にありますよ。乾燥機もセットなので外には干さないですね。」

「ちょっと部屋みてもいい?」


「不潔よゆずる!そうやって女の子の部屋にすぐ入ろうとする。美少女の私は騙されません!」

「いや、美少女は関係ないだろ。」

「レイ君もっとキツめにツッコンでやって」


「そうやって私の部屋に合法的に入り下着以外の物を漁るつもりでしょう、美少女の私は騙されません!」

「いや、だから美少女は関係ないだろ。」

「レイ君もっとキツめにツッコンでやって」


「策士ねゆずる。失くし物を探す親切心を装いながらまんまと美少女である私を油断させて手篭めにする作戦だったのね。」

「いや、妄想過剰だぞ。」

「レイ君もっとキツめにツッコンでやって」


「とにかく美少女の部屋にそうやすやすと入れると思わない事ね!」

「わかったわかった、じゃあ洗濯機の中か、乾燥機の中をもう一度ちゃんと探してみて。」


「そんな訳ないだろう、ゆずる。」

「そういうけどレイ君、よくある話だよ。よく見たら隅っこにあって見逃したとか。」


「美少女である私がそんなおっちょこちょなわけありません!もしあったらゆずるに上げますわ、下着上下セットで!」






















ありました。


お詫びに下着上下セットを貰いました。

こんなのもらっても…























着てみました(笑)



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