第34話 ダンジョン⑤

今日は一挙4話投稿します。17時、19時、21時です。よろしくお願いします。


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僕とこころはダンジョンに足を踏み入れた。

確かに今までのチュートリアルとは違って何か薄暗いジメッとした空間だった。


薄暗いが全く見えないというわけではない、

洞窟といった方がイメージしやすいかな。


こころは動きやすい運動服みたいな服装に着替えた。

武器は棍棒よりも細いスティック?杖みたいな感じだ。

全体的にオシャレだ。


僕なんていかにも冒険者っていう格好してるのに。

なぜか僕のほうが浮いてる感じがするけど、絶対こころの方が浮いてると思うぞ。


「こころ、そんな服装じゃいざとなったら危ないぞ。」

「私はこれで大丈夫なんで、ゆずゆずは気にしないで。」


「ゆずゆずって、まあずるむけよりはいいけど。」

って言ってるそばからウニョウニョしたのが近付いてきた。

スライムだ。


スライムはチュートリアルとほとんど変り無い。

色がカラフルになっただけだ。


まるでアメリカのグミのようだ。

目がチカチカする。


目を細めてレイ君からもらった鋼の剣を振り下ろす。

パンといった音を立てて弾けとぶ。

すごい、ショートソードより威力が上がっている。


その後何度もスライムを倒し、魔石を回収する。

拾う時にチラチラと、こころにすごいだろうアピールをしてたら

ドヤ顔がうっとおしいから見るなと注意された。


「ちっ歯ごたえがないぜ、こいつらは俺の敵ではないな。」

「ダンジョン最弱のスライムしか倒してないんだけど。」

ちょっといきってみたが、いきりが早かったみたいだ。


「ここから先は危ないから俺のそばから離れるなよ。だがソーシャルディスタンスは保つように!」

「どっちやねん!」

あまり近づきすぎると、俺の攻撃の巻き添えになるといけないからそう言ったのだがどうやらこころには伝わらなかったようだ。


「つかず離れず、触らず寄らずつっつかずいてくれよ。」

「ず言いたいだけやん。」


なぜかツッコミが大阪弁風になるこころと一緒にダンジョンの先へと進んだ。


しばらく進んだらゴブリンに遭遇した。

ゴブリンも前回と変わらなかった。

これも鋼の剣ひと振りで済んだ。


ここもそれほど苦労せずに進めるかと思ったら、

前から4匹まとまったゴブリンが一斉に飛びかかってきた。

そのゴブリンを対処している時に後ろからこころの声が。


「キャッ」

振り向くと後ろからもゴブリンが4匹現れた。

しまった挟まれてしまったようだ。


やばい、こころを守らなくてはいけない。

僕はこころを引き寄せて声をかける。

「こころ、怖いだろうが落ち着いて僕のそばを離れるなよ。」


返事がない。

こころは屍のようだ。


なんてことを考えている余裕はない。

こころを見やる余裕もなかった。

ゴブリンが僕たちを取り囲んで今にも襲いかかってきそうだったからだ。


くそ、こうなったらこころだけでもファイに頼んで帰還させてもらうか。

その前にまず右の4匹を横薙ぎにしてから左のゴブリンを順に…

僕が1秒の思考で作戦を練っていたら


「キュピス」

という声が聞こえ一瞬で右端のゴブリンが砂の様に粉々になって消えていった。


「は?」

「キュピスキュピスキュピスキュピスキュピスキュピスキュピス」

シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン

と順にゴブリンが消えていく。


僕は右端からゴブリンが消えていく様を見送った。

最後のゴブリンがやられるのを見送った後、こころに目をやると…


ものすんんんんんごいドヤ顔で僕を見てた。

どやああああああああああああって顔で。


「は?」

僕の頭が追いついていかない。

「は?じゃなくて何か言うことあるでしょ?」


「どゆこと?」

「魔法だよ。」


「魔法?」

「そうだよ。」


「魔法あるの?」

「あるよ。」


「……………………………」

「……………………………」


何か言われた事がぜんぜん頭に入ってこなかった。

まほう?まほうって何?って感じで。

1分くらいだったかな。

もっと長く感じたけど

やっと頭で理解できた。


「えええええええええええええええええ魔法あるのおおおおおおお」

「あっその顔いいよ〜、期待してた予想の3倍くらいおもしろい顔だよ。」

こころは僕の顔をいろいろな角度からスマホで撮影する。


「すごい!こころすごいよ!何で、何で魔法使えるの?」

「そうだろうそうだろう、すごいだろ。もっと私を褒め称えてもいんだよ。」

こころはものすんごい体を反らして踏ん反り返っていた。

あぶないから鋼の剣で背中につっかえ棒しておいたよ。


「今の魔法はなに?」

「キュピスって言って魔物を消失させる魔法だよ。1体ずつにしか効かないけどね。もちろん敵全体を消失させる上位魔法もあるよ。」


「すごっ攻撃魔法じゃん。憧れる〜〜。」

「へへ〜んもっと憧れてもいいのよ。ただし消失魔法は全て消し去るから魔石も残らないわ。」


「使用禁止でお願いします。」

「はやっ!まだ1回しか使ってないのに使用禁止なの!」


「自分魔石歩合制給料ですので。」

「えっそうなの?初耳、ちなみにいくら?」


「スライムが1個50円で、ゴブリンが80円です。」

「絶対騙されてるよそれ、スライムでも1個100円以上すると思うよ。」


“キッュピー(中抜きしてるぞ)”

フェイを介してレイ君が僕に伝えてきた。


「まあそうだろうね。しょうがない。」

「しょうがないって抗議しないの?」


「いや、僕は原価厨じゃないからある程度の中抜きは容認派だよ。経費を引いた分が50円、80円だったら別に普通だと思うよ。」

「ふ〜んゆずるは大人だね。」

たまに700円のラーメンの原価は200円だから500円も利益を得ているぼったくりだ!って騒ぐ奴がいるけどアホかと。技術料、光熱費、バイト代などなど経費どんだけ掛かってるねんと。それを差し引いた純利益なんて本当に少しだろうと。そんなに原価原価うるせーなら逆に作らないほうが手間隙かからずに済むから店をたたむねチキンな僕なら。


「確かにラーメンの手間のかけ方を知ったら1000円以上とっても良いわよね。」

「僕の頭の中読まないでくれる?ラーメンは例えだからね。」

ものすんごい話が脱線してしまった。


魔法すげー→  攻撃魔法全部消す→ 魔石消さないで→ 魔法禁止←今ココ


「じゃあキュピスは止めてロクスにするわ。」

「それはどんな魔法?」


「動きを拘束するの。そこをゆずるが止めをさせば魔石も残るでしょ。」

「ナイスこころ!略してナイコロ!」


パチパチパチ、僕は万感の思いでこころを褒めちぎった。

そしてもみ手をしながらこころにすり寄った。


「あの〜こころさん。一つお願いがあるんでゲスが。」

「ゲスって…まさかゲスいお願いじゃないわよね。」


僕は長年の夢の1つを、思いの丈を彼女に叫んだ!

「僕にも魔法を教えてください!」


果たしてこころの返事はいかに!

待て次回!

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