第19話 異世界人って馬鹿なの?

今日も僕とレイ君はいつものように僕の部屋でくつろいでいた。


「ねえレイ君ちょっと聞いてもいい?」

「何だ?」

読みかけの漫画を読むのを止めて顔を上げる。


「レイ君は異世界人じゃん?何か地球人との、なんていうか違いはあるの」

「それが人の構造的な事を聞いているのなら違いはないぞ。」


「えっじゃあ、地球人と同種なの?」

「ん〜同種ではないな。同型だと言った方がわかりやすいか?」

同型と言われるとロボット的なイメージだな。


「人という種は常に進化している。その都度バージョンが更新されていくんだが

俺たちの世界と地球人は同じ時期に投入されたみたいだぞ。」

豆乳って?どゆこと?


「豆乳じゃない、投入だ。つまり作られ送られたってことだな。」

「ぶふふふーレイ君おもしろい事をいうんだね。地球には進化論っていうのがあってだね…」


「嘘だぞ、それ。詳しいことは省くけど人間の進化に関しては矛盾だらけだ。

地球人は明らかに人為的に作られたと見る方が自然だぞ。」

そんなにトンデモ理論を断言されても引くわ…とも言い切れないか?


「猿から進化するわけないだろ。何千、何万年経っても無理だろ。」

「ふーん。そんな事はどうでもいいんだけれど。」


「ゆずるから聞いてきたくせに。」

「今まで疑問に思ってきた事を聞きたいだけだから。」


「何だ?」

「異世界人って馬鹿なのかなって思って。」

レイ君はベッドから立ち上がってどこからか取り出した

日本刀をスラリと鞘から抜き出した。


「異世界人を目の前によくそんな事言えたな。今なら介錯(かいしゃく)無しで俺が首を切り落としてやる。」


「介錯って切腹する人のそばに付き添っていて、腹に突き刺すと同時にその首を斬って死を助けてくれることだよ?無しじゃ駄目じゃないじゃない?首を切り落す事は決定なの? 違う違う最後まで聞いて落ち着いて!」

必死になんとかなだめすかして、落ち着いてもらい僕が発した言葉の意図を聞いてもらう。でも日本刀が鞘から少しだけ出ててキラリって光ってる。こわっ


「いや、レイ君もこっちの世界に精通してるから知ってるかと思うけど、異世界転生ものの小説やアニメはやってるよね。あれに異世界人のレイ君は思うところはないの?」

「別に無いぞ。フィクション、娯楽として受け止めているからな。異世界といってもオレの国とは違うしな。」


「そうなんだ。僕も好きでよく読むんだけど読むたびに疑問があったから、レイ君に聞いてもらおうかと思って。」

「ああ異世界小説談義がしたいって事なのか。いいぞ。」

そう言ってレイ君はベッドに腰掛けた。

でも日本刀が鞘から少しだけ出ててキラリって光ってる。

全部閉まってくれ。


「飯テロものの分野があるじゃん。異世界に行って現地で日本食を作って貴族、王様が夢中になってミスター●っ子並みに驚かれてちやほやされるって分野。すんごい好きなんだけど…異世界人って馬鹿なのかなっ…」

しゃべってる途中レイ君を見たら、さっきより日本刀が鞘から5cmぐらい出てる。こわっ


「だだだだだって、中にジャガイモを揚げて塩をふるだけのポテトを作ってすっすごい〜〜〜うまっっ、とかおかしくない?ってジャガイモが発見されてから何百年もの間、異世界人はそんな簡単な試行錯誤してなかったのか?ってね。」

「ふむ。そんな風に思って読んだ事はなかったから考えさせられるな。」

レイ君は刀から手を放して考える体になった。


「食事もそうだけど、揚げるなんて初歩的な調理法だと思うんだけど、日本でも奈良時代には中国から伝わってたみたいだし。もちろんフィクションだから史実に基づいていないのも当然だとわかってるけど、異世界人は食材を煮たり、蒸したり、揚げたりを何百年も工夫しないで食べてる事になってるの?って疑問でさ。」

僕もだんだん興が乗ってきてどんどんとりとめのない事をしゃべってしまう。


「その飯テロも内容が全部一緒なんだよね。マヨネーズから始まって、後から醤油、味噌が見つかるパターンで料理はラーメン、トンカツ、カレーライス、お菓子なんかもだいたい砂糖が高価で普及していない庶民は甘いもの食べた事がない設定でクッキー、ケーキ、マカロン、チョコレートなどなど現代食材なぜか発見して使いまくり。」

レイ君も黙って聞いてくれているみたいだ。

まだ僕のターンでいいみたいだな。


「わかるよ、読者に分かりやすく伝えるためには地球の身近な料理に例えたほうがどのくらいのおいしさか伝えやすいものね。ジャマイカの定番のパン、ココブレッドだ!とか言われても日本人の僕たちには未知の物すぎて味が想像しにくいから、カレーパンと言った方が方が想像つきやすもんね。」

レイ君は目をつむってじっと僕の話を聞いてくれている。

寝てないよね?

こんなに友達が力説してるのに。


「逆に前半にめっちゃ料理のレパートリー出し過ぎて、この後何を出すん?って心配しちゃう事あるもん。話の盛り上がりが段々先細りしちゃって。」

ちょっとこっくりこっくりしてないか?

してないよね?


「でも僕が一番不満に思う事は異世界人を未開人だと蔑んでいるように感じるところだ。馬鹿にし過ぎじゃないかなと。未開人たちにこんな美味しいものを俺が与えてやったんだぞ、膝まづけと、傲慢な感じに思っちゃうんだよね。料理で貴族や王様を手懐けるとか無理筋でしょ。フィクションに何マジになってるんだよコイツと思うかもしれないけど、そういった人を小馬鹿にした感じがひしひしと感じるのは不快だなと。」

上手い人はやっぱり設定だよね。

バックボーンがしっかりしている飯テロ小説だと

全然違和感がないからおすすめだ。


「あくまでも一個人の感想だぞ!ある特定の小説の事を言ってる訳ではないよ。悪しからずな!ちびっ子はマネすんなよ!」

「誰に向けて言ってるんだ!保身か(笑)」

あっレイ君寝てなかった。


「ゆずるの言いたい事はわかった。異世界人を擁護してくれたんだな。」

ゆずるくんは服の内側から何か固形のものを取り出した。

サイコロのような形で真っ黒な物質を3個。


「異世界の食べ物だ、食べてみろ。」

「黒々してて食欲わかないな…本当に食べ物?これ。」

レイ君はうんとうなずく。


ちょっと口にいれるのはためらったがレイ君が保証したので、

とりあえず1個口に入れモゴモゴと口の中で味わう。


「何これ〜〜〜めっちゃうまい〜〜」

黒い物質は、噛むと柔らかくプチュっと口の中に

芳醇な香りを放ちつつ甘いような、香ばしいような

元が何かわからないがすんごくおいしく感じる!


僕は続けて残り2個も口に頬張った。

さっきとは違う味、甘しょっぱい味や、甘辛い味がする。

すんごい僕の好きな味ばかりだ。

すごい!異世界の食べ物すごい!


「レイ君すごくおいしいよ!異世界の食べ物。

これは異世界では何ていう食べ物なの?」

僕はレイ君に謎の固形物について聞いてみた。







「家畜のエサだ。」






レイ君はニヤニヤしながら僕に言った。



さっきまでものすごくはしゃいでいた僕は、今マウントを取られている。

肩を床につけて3カウントも取られた。

完敗に乾杯だ。


これがさっきまで僕が力説していた現地人の気持ちなのだろう。

未開人たちにこんな美味しいものを俺が与えてやったんだぞ、膝まづけと。


味あわせてくれてありがとう。

二つの意味で(笑)

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