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 透明感のある声は、ずっと変わらないのだなと梶は思う。

 

短い挨拶をして、橋本文香はマイクを下げると、ユーフォニュームを抱え直した。


 ステージ近くの最前列だからか、彼女の呼吸音すらも耳に届く。


 小さな桜色の唇をマウスピースにあて、そっと息を吸い込み――そしてその息は音となり、ホール内に響き渡った。


 丸くて柔らかいと音の連なり。


 梶はその音を一音たりとも逃さぬように目を閉じて、聴くことに意識を集中した。

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