第21話 私の愉快な幼馴染たち
「くうぅぅっ、照れてる
いつものことなんだけど、いい加減に褒められすぎて恥ずかしさも限界に来ちゃったから、俯いたままポコっと
もちろん、こんなに褒めてもらえて嫌なわけはないんだけど......。嫌なわけないんだけど! 嬉しいんだけど!
それでもTPOってあるでしょー!?
「「はいはい、ごちそうさまです」」
知夜くんの恥ずかしい語りに、
割といつもの流れだけど、知夜くんが口にしてる内容自体も普通に恥ずかしいのに、ここが新しい学校の初めての教室で、名前も知らないクラスのみんながこっちを見てクスクスしてるのと、それなのに私は声が出せなくて反論できないのとで、余計に恥ずかしさ増し増しだよ......。
自分の顔がすっごく熱くなってるのがわかる。
もう、理人くんも遥ちゃんも、そんな生暖かい目で私達を見るのはやめて!
<知夜くん! いい加減にして! そういうのは2人っきりの時だけにしてよぉ!>
知夜くんが私の方を向いてくれたので抗議しようと見つめながら伝えてみる。
「2人きりのときだったら良いって言ってくれるあたりもほんと、夕愛の可愛いところなんだよなぁ!」
<もーばかー! なんでそれを声に出して言っちゃうのー!?>
そんなこと口に出して言っちゃったら、私が2人っきりの時には褒めてもらうのをおねだりしてるみたいに聞こえちゃうじゃん!
「ほぅ。夕愛の方が求めてたわけか」
「ありゃ、夕愛ちゃんが言わせてたみたいなもんだったか」
ほらぁ!
案の定2人とも誤解してるじゃん!
<なんとかしてよぉ! 誤解解いてよぉ知夜くん!>
さすがにこんなことを求めるはしたない女の子だなんて思われちゃったら、いくらなんでも恥ずかしさが限界を超えてしまう。
理人くんと遥ちゃんはともかく、私達のことを知らないクラスメイトのみんなは、これが私のファーストインプレッションになる。
私が破廉恥な女だっていう認識が定着でもしてしまったらたまったものじゃないよ!
「あぁ、ちょっと怒ってる夕愛も最高に可愛いよ!でも、そっか。夕愛がそう言うなら仕方ないね」
そんな私の懇願に知夜くんが素直に反応してくれる。
ちゃんと誤解を解いてくれる気があるみたいだ。
知夜くんはそう言うと、手をメガホンみたいにして口元にあてる。
............?
ちょ、ちょっと待って? どうやって誤解を解こうとしてるのか先に私に教えてもらってからに......。
私の考えを知ってか知らずか、知夜くんは私の方を見ないまま、口元を小さくニヤリとさせて......。
「クラスのみなさん、僕は
廊下にまで響くような大きな声で、そう宣言した。
クラスの女の子たちは黄色い声を、男の子たちは失笑をもらしていて、理人くんと遥ちゃんは大爆笑していた。
私はさっきよりいっぱい知夜くんの肩をポコポコ叩いた。
*****
それからも教室内はしばらくガヤガヤとしたあと、担任の先生がきたところでみんなまばらに自分の席に着席していった。
朝からものすごい辱めを受けてしまったけど、クラスには私達を取り巻く生暖かくて優しい雰囲気が流れていたから、おかげで馴染めそうでもあって一安心......って部分もある。
相反する感情に複雑な気分にさせられつつ、席についた。
席順は名前の順だった。
幼馴染のみんなと近くの席になれたらいいなぁって思ってたんだけど、私達の名前は「
「おーし、みんないるな〜。うん、朝は来てなかった不良の2人も居るようだしなによりだ〜」
教壇に立って全体を見廻すその男の人は多分私達の担任の先生。
その視線は特に、「不良の2人」のところで、私と知夜くんを見ていたと思う。
さっき遥ちゃんが言ってたけど、入学式の前に一旦教室に集まって点呼があったらしい。
人の流れに紛れて教室に入ったらバレないかもとか、無駄な打算はやっぱり無駄で、意味なかった。
恥ずかしい............。
「俺はこのクラスの担任になった
先生の名前は不知火先生というらしい。
眠たそうな目をして間延びした喋り方をする短髪の男性。
頼りがいがありそうか、というとそうでもないけど、怖いって感じじゃないから怒られるときもそんなに心配いらないかな?
「えー、とりあえず皇と御門はホームルームが終わったら俺のところに来るように〜」
「はい」
担任の先生の一言に知夜くんが短く反応する。
私は、残念ながら声が出せないから、「了承」のつもりで手を挙げてみた。
その反応に疑問を感じたのか、先生は怪訝そうな顔で尋ねてくる。
「......? どうした皇〜? 何か不満でもあるのか〜?」
はっとしてしまう。
この先生にはまだ私のサインの意味はわかってもらえないんだった。
私が筆談用のスケッチブックを取り出そうとワタワタしだしたと同時くらいに、教室内に私を落ち着かせる静かな声が響いた。
「先生。ご存知のことかと思いますが、彼女は声が出せません。今のは『了解した』ということを伝えたかっただけです」
いわずもがな、知夜くんが私の考えを代弁してくれていた。
目も合わせてなくて何も伝えてないのにこの手厚いサポート!
さすが知夜くんだ!
「それで先生、世界で一番彼女のサポートを上手くできる僕を彼女の側の席に座らせてもらえないでしょうか!」
知夜くんがそう言い出した。
まぁ、これは毎年のことだ。
小学校も中学校でも、知夜くんは先生方に同じように直談判してくれていた。
そのおかげと先生方のはからいで、ずっと知夜くんと私は隣か前後同士の席にしてもらえていた。
今回もそのおかげで、それと私の前の席に座っていた子が譲ってくれたおかげで、知夜くんと前後の席になれた!
クラスの子が優しい人でよかった......。
前の席の子と、知夜くんが席を交代して着席したあと、知夜くんがこちらを振り向いて、テレパシってきた。
<ははっ、これで今回も近くの席だね。よろしく、夕愛!>
授業中でも声を出さずに意思疎通できるのは便利だ。
本当は自分の声でお話したいけど、しょうがない。こういう便利さがあるから悪いことばっかりじゃないし。
それにしても......。
<知夜くんが前の席だとずっと匂いを嗅いでいられるよぉ! やったよー! ありがとー知夜くん!>
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