第14話 アナタへの2回目の嫉妬
明らかにどんどん絆されているのに、強情にも私達の仲を認めないというお父さんをお母さんが宥めて、なんとか落ち着いてくれた。
お母さんが「私達の娘が信じられないの?私の教育が良くなかったと思ってるのねっ。ぐすんっ」と泣き落としみたいなことをしてた。
これはよく見る光景なんだ。お父さんはお母さんの涙にはめっぽう弱くって、お母さんはたぶん狙ってやってるわけじゃなく素でやってるみたいで、ラブラブな夫婦だ。
場が落ち着いたところで、改めて知夜くんへの尋問、もとい、質問タイムに戻る。
「それで、知夜くんの初恋はいつなのかしら〜?」
お母さんからの質問。
「もちろん、僕も今日です!えっと、夕愛をひと目見たときに、その......初めて女の子を好きだって......思いました」
こんな風に、話し始めは恥ずかしいことでも元気よく言ってくれるんだけど、しばらくすると自分が言ってることに恥ずかしくなってきて、段々声が小さくなっていく姿を何度も見た。
とっても可愛くて、でも気持ちをまっすぐ伝えようとしてくれるところとか、やっぱり素敵だな〜。
あ、だめ、チューしたくなってきちゃった。いま知夜くんと目が合っちゃったりしたら......あっ。
ばっちり目が合っちゃった。私のチューしたい気持ち伝わっちゃった。
あ、知夜くんもしたい気持ちになってる〜。あぁ〜、知夜くんの唇美味しそう〜。
私はぽ〜っと熱にうかされたみたいになって頭が回らなくなってきちゃっている。段々知夜くんの顔が近づいてきて......。
「こらっ。またキスしようとしてるだろ!」
はっと意識が戻ったときにはお父さんに肩を引かれて知夜くんと引き離されて怒られる。
またお父さんってば!
もうお父さん以外はニコニコして私達のチューも認めてくれてるみたいなのに!
しょーがないから後でお父さんが見てないところでいっぱいしよーっと。
私がぶーたれていると、お母さんがさっきの質問を掘り下げるような質問をする。
「うふふ、ラブラブね〜。これまで女の子を好きになったことなかったってことは、知夜くんは女の子のお友達とかもいなかったのかしら〜?」
確かに知夜くんのこれまでの女の子友達関係は聞きたいな。
知夜くんをじっと見つめながら彼の答えを待つ。
「えっと、そうですね。友達はいましたけど、そんなに仲の良い子は、いなかった、ですかね?」
ちょっと歯切れが悪い気がしたけど、なぜか嘘は言ってないことはわかった。
<知夜くん?なにを隠してるのかな?>
<なっ、なにも隠してないよ?<ミアとは仲良かったけど何かあったわけじゃないし!>>
<ふーん。ミアさんって?>
<いやいや、違うよっ!?なんでもないよっ!?<他の子たちよりくっついたり一緒にいる時間が長かっただけだからなにもないはず!>>
知夜くんの心の声がなんだか重なって聞こえてくる。
多分、「私に伝えようと思っている心の声」と「私に伝えないでおこうと思って考えている心の声」が同時に伝わってきてるんじゃないかな。
ふぅ〜ん。そっかそっかぁ〜。知夜くん、私に隠し事するんだぁ......。隠せてはいないけど。
まぁ、嘘を付いてるわけじゃないから許してあげちゃうけどっ。
それでも抗議の気持ちを込めて、ジトッとした眼差しを彼に送っておいた。
でもそしたら知夜くんから、<その目つきもかんわいぃ〜!!!>って気持ちが返ってきたから、嬉しくなってどうでも良くなっちゃった。
そんなことを思っていると、知夜くんのお母さんである
「ふふっ。でも、ともってば、テキサスでも同級生に仲の良い女の子が何人もいたじゃない。特にミアちゃんなんかとは恋人さんみたいに仲良しだったでしょ?あの子のことは好きじゃなかったのかしら〜?」
どうでもよくなかった。それは聴き逃がせないよ、知夜くん!どういうことなの!?浮気!?浮気なの!?............って、あぁ、なるほど〜そういうことかぁ〜。
「なんだと!?知夜くん、うちの夕愛だけじゃなく、他の女の子にも手を出しているのかい!そんな男に娘は任せられないよ!」
お父さんがここぞとばかりに畳み掛ける。
もうお父さん!知夜くんがそんなことするわけ無いでしょ!って、あ、私もさっき一瞬浮気を疑っちゃってたんだった。
一瞬、声だけじゃなくて、表情まで失っちゃうかと思ったよぉ〜。まったく知夜くんってば、罪作りな人なんだから♫
彼の目を見てすぐ、|知夜くんの方には<・・・・・・・・>本当に何の気持ちもなかったのがわかった。
<知夜くんが浮気してないのはわかったけど、そのミアさんって子と、どんなお付き合いをしていたのかは、聞いておきたいなぁ〜>
「そのミアちゃんって子とは、どんなお友達関係だったのかしら〜?」
私の心の声とお母さんの声がほとんど同じことを知夜くんに尋ねる。
「いやいや、ほんとに何もなかったんですって!」
「え〜?でも、ミアちゃんと一緒のお布団で寝てたり、腕を組んでたり、こっちにくるときの空港ではお見送りに来てくれて『また会おうね』ってお約束もしてたじゃないの〜」
「ちょっ、母さん!?」
否定する知夜くんの言葉に対して食い気味に晴さんがつっこむ。
あ、だめだ、私の目が虚ろになっているのがわかる。
光が反射していない目で、彼を見つめて、優し〜く尋ねてみた。
<知夜くん?どういうことかな?気持ちがあったのは
知夜くんがバツの悪そうな表情でしばらく押し黙る。ややあって、諦めたようにゆっくりと口を開いて話し出す。
「いや、確かにミアとは仲良かったし、他の友達も含めて一緒に遊んだけど、本当になにもなかったんだって。ただの
みんなに向けて口頭でそう伝えた後、私の方を見て、<彼女が僕のこと好きなのかもっていうのは気づいてたけど、僕はそう思ってなかったんだ!だから、なにもないんだよ!>と必死に伝えてきてくれた。
ふむふむ、さっきもちょっと伝わってきてたけど、これは本当のことみたいだねっ。
ふぅっ、危なかったぁ。私、表情まで失わなくて済んだよ〜。
そのミアさんって子は可哀想だけど、知夜くんは私だけの大事な人だよっ!ごめんね!
でもそっかぁ〜。私より多くの時間を一緒に過ごした幼馴染......。ちょっとその子のこと、許せないなぁ〜。
その気持ちはもちろん彼に伝わってるみたい。それに対して彼からも抗議の気持ちが伝わってくる。
<ゆ、夕愛も僕に嫉妬してたりするかもしれないけど、キミの方こそ、理人とずっと一緒なんでしょ!?羨ましすぎるよ......>
可愛くって、愛しい気持ちが爆発しちゃって、彼に近づいてギュッとしたあと、彼の口の中をちょっとだけペロッとしちゃた。
知夜くんってば、とろんとした目で、<夕愛には絶対ウソとかごまかしはしないようにしないといけないね......>なんて思ってるから、もう一回しようと思ったのに、お父さんに止められちゃう。
さっき、後で隠れてしようと思ってた決意が揺らいじゃった私が悪いわけなんだけどさ〜。
本当にいい加減にしてほしいなぁ〜。お父さんじゃなかったら私、なにしてたかわかんないよっ!
でも、知夜くん、そうだよぉ〜!私達の間に、隠し事なんてあっちゃいけないし、できないんだからねっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます