おっちゃんの言葉

「━━━━ってことがあったんですよ。私はますます同性婚を認める法律を作りたくなりました。」

「どうしてだい?」

「もし、同性婚が認められれば、同性での枕営業というものも理論的に存在することになります。そうすれば、枕営業を迫られる側の気持ちも男性も理解できるじゃないですか。だからです。」

おっちゃんは一瞬びっくりしたような顔をした。だがすぐにうんうんと頷いてくれた。そして、悲しそうな顔をした。

「春野さん、同性婚は私も認められるべきだと思う。春野さんがいつも言っている生理休暇だって一理ある。だが、もし、未来で春野さんがこの党の総裁になって首相になったとしても、多分それの実現はほぼ不可能に近い」

穂結はこんなに悲しそうなおっちゃんの顔は初めて見た。

「なぜか…聞いてもいいですか?」

おっちゃんは頷く。

『この党の人間の大半は、今の社会を大きく変えようとする傾向を嫌う。つまり、春野さんのような、大きな変化をしようとする人が首相になっても、党の人間がこれでは総裁を辞めさせられるだろう。私はそれを良くは思わないが、私も歳だ。今から離党してもできることが圧倒的に少ない。でも、春野さんは違う。君はまだ色々なことが出来る。だから、色々な道を考えてみて欲しいんだ。この党でやりたいならそれでいい。君の目標が達成できる確率の高い道を選びなさい。』

穂結はこの言葉からおっちゃんの後悔を知った。

(今はおっちゃんも首相だ。離党するとなっても分かってくれるだろう。)

そして穂結は離党し、新たな党、『H党』を立ち上げた。


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