幕間《おまけ》――突然ですが、キャンディをあげてみた――

『ヘレニウムの場合』


とある少女にキャンディを差し出してみたところ。


「要りません」


きっぱり断られました。



――――


日を改めて再チャレンジ。


すると。


「この前要らないと言ったはずです。……なんですか? 私の見た目で、アメでもやっておけば喜ぶだろうと思っているのですか?」


子ども扱いしたと思われたようです。


「いえ、そんなことはありません。ただ、自家製のキャンディが自信作でしたので、いろんな方に配っているだけだったのですが……残念です、美味しいのに……」


ちなみにキャンディはこの世界では高級なお菓子です。

主に花蜜を固めたり、紅茶や薫り高い果物を混ぜ込むことが多いです。

私の自作品は、花蜜多め、で少量柑橘系と紅茶を混ぜてあります。

舐めるとまず、花のいい香りが。そのあとふわっと紅茶の香。

後味が、柑橘系でサッパリ、という感じになっています。


でも受け取ってもらえないならしょうがないですね。


しょぼんとしながら、帰ろうとしますと。

背中から声が。


「待ちなさい」


振り向く。


「……仕方ないですね。別に欲しくはありませんけど、貰うだけもらってあげます」


「そうですか!」


はい、と嬉々としてダッシュでアメを渡します。


「それでは」


そそくさと立ち去りまして。



―――

その後。



私が完全に立ち去ったと『思い込んでいる』少女は、包み紙を解いて、アメを食べました。


そして小声で言った言葉を私は聞き逃さない。


「あ……美味しい」


フフフ。

してやったり。

頑固そうな女の子が、素直に美味しいと言葉にするのは、ポイント高いですよ!


すると。


ふと少女が振り返り。


物陰から見ている私と目が合う。


「あっ!」


お互いハッとして。

少女の顔がみるみる真っ赤に。



照れ顔ごちそうさまでした。

では、見つかったのでさっさと逃げます。

すたこら。


すると少女も鬼の形相で追ってきます。怖い。

とりあえず盾とハンマー仕舞ってほしい。

つかまったら命が無さそうです。


私は必死で逃げながら、どうしても一つだけ言っておくべきことがあったので、

くるりと反転し、立ち止まって。

口元に両の掌をあてがって、メガホン。


「走りながらアメを舐めると、のどに詰まって危ないですよー!」


皆さんもやめましょうね?



ではさようなら!

自慢の逃げ足で私は無事逃げ切りました。




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