厄除けの僕は叫ぶ

 屋上にはたった6人 うち一人は司会役の中崎くんである。

 イベントに駆り出された、いや参加した者達は勇者なのか。


 トップバッターの先輩男子生徒が叫ぶ。


「さいとう えりなさん!ぼく」

「あ、すいません先輩 声が小さいっす」と中崎くんのダメだしが入る。


「さいとう えり」「あ、ちょっと待ってください」

 もう校庭ではさいとうえりなさんに皆が大注目である。校庭担当の先輩が張り付いているようだ。


 中崎くんはメガホンを持ってきた。ただの応援用メガホンだから気休めである。

「じゃ、どうぞっ」

「さいとう えりなさん!僕は......僕は君がずっと好きでしたーっ!!!付き合ってください!!」


 校庭で、返事を叫ぶよう促される、さいとうえりなさんは

「ごめんなさーいっ」


 ざわつきながらも拍手が起こる校庭を眺め告白した先輩男子は何度も小さく頷きながら退散した。


 とその後は『高田先生のお弁当は毎日そぼろ弁当なのは何故ですか』とか。『私がアイドルになれると思う人何人居ますか手を上げてー』とかであった。


 そして、メガホンを渡され、「いらないっ」とつき返し屋上から叫んだのは凛ちゃんであった。


「私は―――!アメリカから帰ってきて―――、2キロ痩せたって皆に言ってるけど――っほんとは、3キロ増えた――――っ」


 校庭では笑いが起きた。が、何故か校庭から叫ぶ男がいる。


「俺は―――っぽっちゃりした凛ちゃんが好きだ――――ッ」


 え?下を確認したら、たしかにこの声は......ジャージ姿の春斗である。


「凛ちゃん返事は?」と中崎くんが言うも「え?なに?これ返事するやつ?」

「え?」


「ありがとーっ!」


 あれ?春斗のは何告白なのか不明である。


 そして僕の番がやって来た。


「いるか?メガホン」「いや、いらないっ」


緊張で足が揺れる感じがする、あ屋上だから怖いのもある......。

僕は精一杯大きな声を出した.......つもり。


「あ、愛ーっ!僕は君に似合わないかもしれない――だけどーっ君の隣にいたいんだっ あ......」


「ほんで?山本しっかり言えよ」と中崎くんが横から急かす。


「愛ーっ!僕はずっと君を、見ていた」

 ああぁ、今こそ言うんだっ。

 うしろで誰かのため息も聞こえる。すいません......。


「愛―――っ!僕は君が好きだ――!!大好きだ―――――っ!!」


「私も大好きーっ」


 言えた......。校庭ではみんなイエーイイエーイとはしゃいでいる。

 急いで校庭に下りた僕は愛をめがけてダッシュした。


 そして愛を力いっぱい抱きしめた。


「愛」

「太陽」

「僕 やっと言えた」

「ふっ。太陽はいつも好きって言わなくても、たくさん色んな言葉をくれてたよ。でもやっぱり嬉しい。ありがとう 太陽」

 可愛い......これぞ愛しの愛なのだ。


「ちょっと ミス百合授賞式より盛り上がるのやめてくださらない?」と近づいてきたのは彩花だ。


「愛......私負けたわ」

「え?」

「色々とね。だからお母さまには金輪際学費うんぬんで邪魔しないように言うわ。3年まで保証よ。」

「条件は?」

「いやねっ無いわよ!条件なんて」とふくれた彩花

「じゃっ私から条件」

「な なによ」

「また 友達になろう」

「........ わかったわ」


 皆はまたイエーイ!っと盛り上がる。



◇◇◇



 帰り道二人きりで歩く。もう隠れたり、気を使ったりしなくていい。手つなぎだって遠慮しなくていいんだ。


「愛 よく頑張ったね。ミス百合」「うん。歌.....きいた?」

「うん。ドアから覗いた。かっこよかった、可愛かった」

「太陽もダンスさすがだったよ。バレエシューズまで履いてありがとう」

「あ、あれは......いや うん」

 僕は更衣室での事件なんて遠い昔のように感じた。


「愛!」「なにっどうしたの」

「マスカットティー買う?」「なんで」

「あっ、いや。」「ちゅ~したいの?」

「え.......うん」


 僕らは道端でちゅっとした。


 高校の恋なんて終わりが来るだろうとか、小さな恋だって言われるかもしれないけど。

 僕は、さよならなんてしないぞ。


「愛 大好きだよ」「うん 私も 大好き」


 もう厄除けはさよならだ。いや永遠に厄除けの如くへばりつく覚悟である。愛が僕を好きでいてくれる限り。


「そうだ 春斗と凛ちゃんってさ」

「ん?ああ あれ?分からないけどぽっちゃりでも可愛いいよみたいな感じかな?」

「ふうん.....」

 きっと春斗の心には凛ちゃんがぎゅーぎゅーに閉じ込められている気がする。

 だとしたら全力で応援したい。


 僕はすっかり人に関わるのが好きになったのかもしれない。



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 おわり




 ここまで読んでくださりありがとうございました。

 未熟者ですが今後ともよろしくおねがいします。

 コメント、評価いただければ嬉しいです。

 無くても泣きません。たぶん。

 注)ひとり言

 いやぁ学園ものっていいですね。キュンキュンしてって......?書いてる人だけとい     うオチ.......。

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さよならはまたあした~厄除けの僕が君を好きと叫ぶ日まで 江戸 清水 @edoseisui

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