ボクシング実践編?

 日曜日 僕 春斗 in 木下ボクシングジム 

 見学 愛 凛ちゃん


「さっ、まずは何も考えずにサンドバッグをパンチングだ!シャッ スタートッ」


 ワシャシャシャシャシャシャシャーッ!!


 速い、目に見えないほどに次から次に放たれる木下君のパンチ。速いのに重いパンチだ。そして眼光が鋭い。

 いつもより凄まじいのは見学者がいるからか。


 そして、

 ハァハァハァハァ

 パンチ20回ほどで尻もちついている春斗......持久力ゼロである。


 そして僕はパンチに力が.....無い。

 サンドバッグが踊らない。

「太陽くん、キックもしてみて」とコーチ


 バーンッ


「やっぱり。君は体幹がいい。なんかやってる?」

「ば、バレエです。クラシックバレエ」

「えーっ!!」

 あ、ついにバレエ男子をカミングアウトしてしまった。


 その後はコーチ相手にリングでスパーリング

 さらに、木下君と練習で僕はすぐにぶっ倒れるのであった。



 その後はみんなでファミレスへ。


 ボクシング話に花が咲く中、愛を見ては乙女漫画の主人公に重ねる僕。


「ちょっムスコ聞いてる?」

「え」

「はあ....最近陰じゃなくなったけど、ぼーちゃんになったじゃん」

「ぼーちゃん?」

「ぼーっとしすぎ それからストーカー化し過ぎ」

「たしかに、山本くんは愛さんを常日頃マークしていますね。僕から見ても驚くほどの徹底ぶりです」

「いやあ それほどでもないです」

「褒めてないだろ 愛ちゃんはどーなの?」

「どーって?」

「ムスコにじっと見られてさ」

「.......ん 悪くない」

「えっ!?なになにっ。ムスコ!おまえっ脈ありだぞ」


 春斗......ありがとう。でも今僕の望みは愛とのデートだから。早く解散したいのである。


 そんな僕の想いは通じずカラオケへ。

 みんなが帰りやすいようにと学校の駅近くに移動したのが誤りであった。


 トップバッターはジャンケンで負けた僕。緊張のなかイントロが流れ♪〜


「っ」

「失礼っしまーす ワンドリンクお持ちしゃっしたっー」


 あぁぁ


 と、店員さんが部屋を出た時閉まりかけのドアからこちらを覗くヤツと目があった。

 前に下駄箱で絡んできた彩花軍、いや正式には要くんの子分だ。

 もう、歌っている場合ではない。縦長のドア窓から覗くヤツらに不吉な予感を感じた。

 春斗に緊急事態を宣言し、僕らはカラオケを出る。


 店を出たら、背後から呼び止められる。


「おいっ山本」


「はい」


「処刑命令だ」


「走れーっ!!!!」


 僕は有無を言わさず逃げる作戦を決行した。

 相手は5人 僕らも5人だが、うち2人はレディである。

 先頭を走る木下君は駅をめざす。が、駅の広場で春斗がコケた。

 木下君は凛ちゃんと愛と先に駅まで向かった。


 僕は、春斗を起き上がらせた。


「逃げんなや 逃げたら追っかけたくなるじゃん」

 ケラケラ笑うヤツらに囲まれる我ら2人。


「君たち、何が楽しくてそんなポジション引き受けてる?」

「はあ?意味わかんないんすけどモヤシさん」


 と、殴りに来たが僕はかわした。木下君のパンチより数段遅かった。

 腹が立ったのか数回殴ろうとするも交わす僕に別の奴が横に来て一発顔面をやられた。鼻に当たり鼻血ブーである。

 春斗にもあとの奴らが攻撃を仕掛けようと、これは不味い。


「何が目的だ」

「ん?調子のんなっつってんだよっ」


「はい、止めなさい君たち。警察呼ぶよ 君、鼻血?」


 近くにいたサラリーマン風の男性が声をかけてくれ、ティッシュをくれる。


「あ、すいません。ありがとうございます」


「君たち、青春にケンカはつきものだけどさ、相手手だしてないんだからただの暴力だよ」


「うるせっおっさん」


 事なきを得て、鼻の穴をティッシュで圧迫止血しながら立つ僕の元へ愛が走ってきた。

 ふわりと風になびいた黒髪が僕の顔にかかる。

 愛は僕をぎゅっと抱きしめた。


「太陽っ太陽 太陽......」


 愛が泣いた。


 あれ、漫画じゃカッコ良く不良達を一人で撃退して主人公に「大丈夫?」とか言うんだ。

 全然違う、サラリーマンに仲裁され鼻血出しただけであった。

 でも、今僕を心配した愛が泣いている。愛が泣く姿なんて見たくないけど、泣かせたくなんかないけど、ちょっと嬉しい。


「大丈夫だよ。鼻血出ただけだし」

「止まった?鼻血」

「うん」

「どれ?止まったね。腫れないかな。冷やすもの....私の手しかないや」と愛は僕の顔を手で挟む。


 気づけば後のお三方がぼーっと僕らを眺めていた。


「愛、愛」

「え」


「さっ私達は帰りまーすっ。ほら行くよ いやあ、私は走れるぽっちゃりさんで良かったわ〜」と凛ちゃんが二人を連れて行った。


「ばれちゃったかな」

「ん でもまさか僕が愛となんて信じるかな」

「そう?お似合いでしょ。私達。でもあの男子たち許せない」


 愛はなんだかプリプリ怒っていた。

 僕は愛に危害がなくてホッとしていた。きっと要くんの指示なら愛を傷つけることはないだろう。

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