彩花に物申すのだ

 朝から見るに耐えない化粧のマーサ。付け睫毛ワサワサで黒目が何処にあるやらもはや分からないほどだ。その労力ほかに使えばいいのにな......。


 また彩花が話があるから彩花食堂へ来いとの伝言だ。昨日の今日で行くわけがない。話があるなら一昨日来やがれだ。


「昼は行かない。放課後 中庭」

「え、まじでッ太陽 告るっ?」

「は?」

「超こわ。冗談ーっす。んじゃ言っときまー」



「彩花ーっ。彩花!太陽が放課後中庭に来いってー!」



 声が.....大きい。うちのクラス及び隣のクラスに響き渡ったであろう。


 今日は朝から酷いもんだ......僕のロッカーに置いてあった私物は全て水浸し。

 椅子はついに消えている。

 どこだよ!!椅子っ。


 愛は無事みたいだ。可憐にちゃんと椅子に座っている。

 心なしか愛が不安げに僕を見る。

 大丈夫だよ、君の厄除けは慣れてますからこういう現象。


「山本君、どうしました?エアトレーニングですか?」

「....う はい木下君 そのようなものです。」





 ☆放課後



 僕はキレている。半分はキレている。半ギレだ。

 キレる10代だ。今ならそう言っても過言ではない。


 案の定野次馬が、渡り廊下に居た。

 彩花が中庭に得意げに歩いてくる。


「山本太陽 どうして勝手に帰ったの?おめでとうも言わずに」


「おめでとう」


「まあ 心がこもってないこと......」


「話ってそれだけ?」


「え?そうよ」


「何故に愛に辛く当たる?母子揃って」


「お母様が?それは、お父様が悪いのよ......」


「では何故に僕に嫌がらせをする?君のグループに入らないから?」


「私が?何をしました?」


「はあ?記憶にございませんか。僕のロッカー水浸し、ジャージ切るし、椅子に絵の具やガム、今朝は椅子すら消えたし、この上靴も」


 僕は勢いよく片足を前に出した。


「はい?ちょっとその上靴よろしい?」


 しゃがみ込んで僕の上靴を凝視する彩花....野次馬達も固唾をのんで見守る。

 立ち上がり目を丸くする彩花。手下が勝手にやったとか言うのか。


「私じゃありません。」


「ふぅん。じゃ君の子分達かな?」


「............」


 何故か彩花は怒ったように去っていった。

 あの様子では本当に寝耳に水?

 僕はいったい誰にいつ、この嫌がらせを仕込まれてるんだ......。

 彩花軍の奴らは基本ぐうたらのヤンキーかギャル男やチャラ男。着実にしっかり仕込まれているのが今頃ゾッとする。


 教室にかばんを取りに帰ったら、まだ春斗と木下君が居た。


「大丈夫だったかムスコ」


「え」


「リンチにでもあったらヤバいから俺ら待ってたんだぞ」


「あぁそれはありがとう」


「どうしたんですか。浮かない顔ですね」


 僕は連日の嫌がらせの話を事細かく二人に教えた。


「ロッカー水浸しとか、怪奇現象なんじゃね?もしかして、溺死した生徒が使ってたロッカーとか」


「じゃ椅子は?」


「消えた椅子.....わあ怖い話のタイトルにありそーっ」


 春斗に聞いた僕が馬鹿だった。



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