第14話知られてしまったスパイ

スパイとして遊撃隊に潜入した来馬(雷太)だったが、そのことをアゴノにとっくに見抜かれていたことを突きつけられ、表情が凍りついた。

「お前はおれたちのことを知るため、いわゆるスパイとして遊撃隊に入隊した。アゴノ様によると、前日にシュウに頼んで変装のアイテムを用意してもらったそうだな。」

そこまで言われて雷太は何も言えなかった。

顔は変装アイテムの効果で変えられても、記憶は変えられない。そこを見事に突かれた。

「顔を変えても、アゴノ様を出し抜くことはできないんだよ!!」

「そうそう、おれたちでもアゴノ様をだますなんて無理だけどね。」

アマジャーとジャッカルギーは大笑いした。

だけど雷太はふと疑問を持った、そしてデカンクラッシュに質問した。

「じゃあ、どうしておれを殺さないんだよ?スパイだってとっくに気づいていたなら、そうするべきだろ?」

「ああ、確かにその通りだ。だが、アゴノ様はお前を生かして、刹那たちの組織の情報を聞き出すことにした。」

「それだったら、拷問とかしないのか?」

「完全な仲間にしたいようだ。だから歓迎している。」

「ふざけるな!おれは絶対に、お前らを仲間とは思わない!いずれおれが裏切って、お前らが大火傷したって、知らないからな!!」

雷太は捨て台詞を言って、そのまま知らん顔をした。

「あれでいいんですか、親分?」

「おう、これでやつにプレッシャーをかけることはできた。ジャッカルギー、明日はお目付け役任せたぞ。」

「へい、親分!」

こうして夜はふけていった。









一方、刹那たちの組織ではこれからどうするか悩んでいた。

秋谷と珠美を失い組織の戦力がかなり削られてしまったのだ、だがそこはドルクスの仲間が代わりを連れてきてくれたのでいい。

だがそのせいで、組織においてのドルクスの発言力が強くなっていった。

「刹那、こうなったら容赦なく徹底的にやるしかない。人為的に作られた破壊じゃだめだ、この地球にあるあふれんばかりのエネルギーを使おう。」

「ドルクス、そのエネルギーって何?」

「マグマだ。」

「マグマっ!?」

「そう、あれが町の中で川が氾濫するように流れ出たら・・・、これまでにない数の死者がでるぞ。」

確かにドルクスの言う通りだ。だけど、どんなにイカれた奴でもマグマを殺人に利用しようとは思わない。

第一、あんなものどうやって扱うというのだ?

「どうやってマグマを利用するのか・・・、それは『ラヴァー・モンスター』を我がものにするということだ。」

「ラヴァー・モンスター?ドルクス、あんたRPGのやりすぎじゃない?」

刹那はドルクスをバカにする目つきでみた。

「いや、信じられんのも無理はないがこれはおれが独自に調べて突き止めたことなんだ。聞きたくないかい?」

「まあ、聞いてあげるわよ・・・。」

刹那はドルクスを内心は信じていない態度になっている。

「最初、おれはマグマをダーク・サイエンスの科学力を使ってマグマを制御することを考えた。だけどその中で伝説のラヴァー・モンスターの存在を知った、おれは半信半疑で実際に現地に行って調べた、そうしたら見つけたんだよラヴァー・モンスターを。これを見てほしい。」

そうするとドルクスは映像を刹那の目の前に映し出した。

「これが・・、ラヴァー・モンスター!!」

それは溶岩が細長く伸びていてヘビにたいにくねくねと動いていた。体からは溶岩が蜜のようにドロドロと垂れていて、見ているだけで熱くなるモンスターだ。

「こんなモンスター、どこで見つけたのよ・・・?」

「ハワイにあるキラウエア火山だ、あそこのはるか底深くにラヴァー・モンスターは封印されている。」

「封印・・・、一体誰が?」

「いや、あんなモンスターは人の手で封印できる代物ではない。あれを封印できるのは、アースライゴンくらいなものだ。」

「アースライゴン・・・?」

「地球の力を統べた伝説の創造神、地球龍神アースライゴン。ラヴァー・モンスターを生みの親であり、それを封印した存在だ。」

「ラヴァー・モンスターの生みの親がどうして封印したの?」

「さあな、そこまではわからなかった。だけどラヴァー・モンスターの力があればいろんな都市を焼き払うことができるぞ。」

「確かにできたらすごいけど、そんなこと本当にできるの?」

「おれにお任せください、おれはずっと私の味方だよ。」

ドルクスは得意げに刹那に言った、刹那はドルクスの話を完全には信じていなかったが、一応の目標として頭にとどめておくことにした。








翌日、水戸雷太もとい来馬は遊撃隊の一員として活動することになった。

遊撃隊はボスであるアゴノを中心にして、『ワニ騎士団』・『トラ鼓舞隊』・『デビルクレイジー』・『エンジェルワンド』という四つのグループに分かれている。

雷太はジャッカルギーの案内で三つのグループにあいさつ回りをしに行っていた。

「ふだんのおれたちはそれぞれの組織の者として活動しているが、何かあったら協力しなけりゃならないから、顔を覚えてもらう事はとても大切だぞ。」

「はい、わかりました。」

そしてジャッカルギーが案内したのは、「エンジェルワンド」の部屋だ。

「あら、いらっしゃい。」

ヒカリが愛想よく迎え入れてくれた、雷太とジャッカルギーに紅茶を淹れてくれた。

「ありがとうございます・・・。」

雷太は紅茶を飲んだ、とてもいい香りで美味しかった。

「これからよろしくね、スパイさん。」

ヒカリは笑顔で言ったが、そこが雷太の恐怖をかきたてさせた。

エンジェルワンドのメンバーは、ヒカリ・ブレイブイーグル・ヒュミノ・ボーの四人である。

(やっぱり、スパイだということが知られている・・・。)

雷太はそんなもどかしさを心に秘めて紅茶を飲み干した。

エンジェルワンドの部屋を出た雷太とジャッカルギーが歩いていると、グリムディーンがメンバーを連れてやってきた。

「よお、雷太!ここにスパイに来るとはいい度胸してるな。おれがじきじきに、切り刻んでやるよ。」

グリムディーンは下品に笑いだした。

「ちょっと、下品すぎよ。」

「それじゃあ、怖がらせてるみたいです。」

ガーとゴブリノがたしなめたが、グリムディーンには聞こえていない。

「デビルクレイジーはあいつのせいで一番品性がが悪い部隊だが、こう見えてもリーダーのグリムディーンは、ときに優しいこともあるんだぜ。」

「おい!オレのイメージを下げるな!!」

顔を赤らめるグリムディーンをよそに、雷太とジャッカルギーはいよいよワニ騎士団の部屋に来た。

「いいか?うちとワニ騎士団は、永遠のライバルだ。気合い入れないと格好がつかない、威勢よく行くぞ。」

ジャッカルギーは雷太に強く言った。

「たのもう!あいさつしにきたぞ!!」

「雷太、ただいま参りました!」

するとドアが開いて、ドラゴンナイトが現れた。体格は太めでアリゲーターナイトよりも背が低い。

「よく来たな、おれはキバネだ。団長、雷太が来ましたーっ!」

キバネが呼ぶと、アリゲーターナイトが現れた。デカンクラッシュに負けない存在感を雷太は感じた。

「君が雷太か・・・、顔は前より変わったけど勇気と根性があるな。もしスパイじゃなかったら、快く迎え入れられたのに・・・。デカンクラッシュも大変な役を任されたものだな。」

アリゲーターナイトはため息をついた。

そして部屋から出る時に、雷太はアリゲーターナイトに言われた。

「もし本性を見せたら、いつでも相手をしてやる・・・。」

その目は獲物を見つめるワニの目になっていた。

そして全てのあいさつを終えた雷太は、ジャッカルギーに言われた。

「おれはあんたに撃たれたこと忘れていない、だが今は虎鼓舞隊の一員として認めてやる。スパイをあきらめて、これから親分につくすというのならな。」

見つめあうジャッカルギーと雷太の目の間には、バチバチと火花がなっていた。









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