1-2.Annunciazione



《今日のレースの優勝者はとんでもねぇものを手にする!! 金でも資源でもねぇぜ、俺達ワイルドウイングの至宝だ!》



ワイルドウイング・トランスポーターコミュニティーズ。


それはこのイベントを主催する、実質的にメディオを統治しているグループだ。


今DJブースにいるジジもワイルドウイングに吸収された身で、ステージ設営、コース設営、スポンサー誘致、プロデュース、そして資金提供、今やその全てをワイルドウイングが担っている。


その名を知らぬ者はこの会場内に一人として居ない。



《エントリーは4人。それぞれフォロワー数はこのメディオでもトップクラス、スター勢揃いってわけだ。その中を勝ち抜いたヤツが、俺達ワイルドウイングが作り上げたストリート最速の車を手に入れる!!!!!》



サリーン・S7、純白のボディとコントラストを作るエアロパーツの武装、そして艶やかでありながら荒々しいエンジン音。


ステージ袖からそのスーパーカーが現れ、演奏中のバンドの隣に鎮座した瞬間、大歓声が上がった。


ジジの言う4人のうち、1人はシークレットとして3人は既に公開されている。


その3人は全員フォロワー数だけでなく過去のレース成績でも上位を独占し、各々にファンも多い。


ステージ前で歓声を上げる者達の中には、S7に続いてステージ後ろの展示スペースに目を向ける者もいた。


彼らが駆る歴戦の愛車が展示されているスペースだ。


そこにあるのは4台、シークレットのレーサーの愛車だけがベールを被っているが、3台は会場の大小様々な照明に照らされて艶かしく輝いている。


特に、1台。


真紅のフェラーリ・F40は、展示スペースどころか会場内にあるどの車よりも知名度と人気を勝ち得ている。



《レーサーは全員フォロワー数トップクラス、メディオ史上最高にハイレベルなレースになることは必至だ。そしてこのレースを勝ち抜いた一人がこのサリーンを手に入れ、さらなる高みに到達するぜ!!!!!》



大歓声とともに鳴り響くクラッシュシンバル。


曲の終わりと共に掲げられたジジの拳は、イタリアの夜空を衝いた。


メディオストリートレース、過去最高のボルテージが会場を包み込む。



《さあ、いよいよレーサーの紹介だ。まずは優勝最有力候補、今日のレースまで全戦無敗!! ミスターパーフェクトゲーム、“レオ”!!!!》











《もうここにいるぜ、ジジ》















先程まで演奏していたばかりの仮面バンドのドラマーがマイクを手に取り、ステージ最奥のドラムセットで立ち上がる。


彼がマスクを脱いだ時、今までの中でも最も大きな歓声が上がった。


通り名、レオ。


真紅のF40を駆る、メディオにおいて最も最速に近い男だ。



 


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